Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
動物実験に先立ち、ヒト血中アディポネクチン濃度に関し、検討することとした。ステントグラフト治療前の大動脈解離患者の血中のアディポネクチン濃度をELISAにて測定し(急性大動脈解離 9名、慢性大動脈解離 9名)、健常人(11名)の血中アディポネクチン濃度と比較したところ、急性大動脈解離では明らかな有意差は認めなかったが、慢性大動脈解離の患者において血中アディポネクチン濃度が低下していた(健常人 9.8±5.3 μg/ml vs. 急性大動脈解離 8.5±4.1 μg/ml vs. 慢性大動脈解離 5.0±3.1 μg/ml )。また、B型大動脈解離において降圧安静治療を施行された患者において24時間以内、24~72時間、72時間以降で血中のアディポネクチン濃度を測定すると(N=5) 、24時間以内に比較し、時間経過とともにアディポネクチン濃度は減少していた(24時間-78時間: 80.4±11.3%, 78時間以降:62.5±21.5% vs. 24時間以内)。これらの結果より、大動脈解離発症から慢性期に移行するに従い、血中のアディポネクチンが低下するのではないかと考えられ、大動脈リモデリング等に関与する可能性が示唆された。現在までに大動脈解離とアディポネクチンの関係について調べられた報告は認めず、その相関性を示せた事は臨床的にも意義深い。