Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
2014年度は、2011年度から行っている人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:以下THA)を受けた患者のQOL向上に向け、周手術期から継続した看護支援の示唆を得ることを目的とし、継続調査を行った。対象は、県内の施設でTHAを受けた患者で、平成23年~24年に実施したTHAを受け、退院時(術後1か月)、術後3か月、術後1年のアンケート調査に協力の得られた患者32名のうち、今回の術後3年の調査に協力の得られた患者とし、郵送法にてアンケート調査を実施した。有効回答は、29名であった。WOMACによる比較では、術後1年でこわばりと日常生活困難度、術後3年では疼痛においても有意な改善(p<0.05)が認められた。QOLサマリースコアによる比較では、術後3年では身体的側面、役割/社会的側面で有意な改善(p<0.05)を認めた一方で、精神的側面の点数のみ低下していた(p<0.05)。自己管理の実施率は、術後1年で脱臼予防、生活の工夫、リハビリの継続の3項目が8割、感染予防が6割、術後3年で、生活の工夫は8割、脱臼予防は7割、感染予防とリハビリの継続が6割であった。QOLの関連要因として、手術回数、リハビリ困難感、日常の困り事、手助けの必要性、相談相手の有無、脱臼予防、感染予防が挙げられた。特に、QOLと自己管理との関連においては、脱臼予防や感染予防を実施していない者のQOLが高く、人工物を気にしないで生活している事がQOL向上と関連していると考えられた。さらに、術後1か月と術後3年の比較では、リハビリの継続は有意に低下しており(p<0.05)、術後年数の経過とともに、リハビリの実施率の低下がみられた。文献からも術後年数の経過に伴う感染予防やリハビリなどの自己管理実施率の低下が指摘されているが、人工物挿入に伴う合併症の発症を長期的に予防していくためにも継続的な看護介入の必要性が示唆された。