Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
本研究の目的は、健常成人と発達性読み書き障害成人を対象に、1)漢字単語音読時の単語全体としての処理だけでなく漢字文字列を系列的に処理する過程の実在性について検討を行い、音読処理過程をより正確に表す漢字単語音読モデルを提案すること、2)発達性読み書き障害成人例での漢字単語音読時の音読方略を明確にし、3)障害構造に基づく効果的な支援を提案することであった。平成26年度においては、より正確な音読モデルを提案するために、漢字単語音読時における「文字レベルの系列的な処理」の実在性を明らかにすることを目的に、文字数効果(実験1)と非典型的な読みの位置効果(実験2)を検討した。実験1では、大学生・大学院生48名に、1文字または2文字の漢字実在語と漢字非実在語(各条件36語)を音読してもらったところ、非実在語においてのみ1文字語よりも2文字語の音読潜時の方が有意に長くなるという文字数効果がみられた。実験2では、片方の文字または両文字の読み方が非典型的な読み方をする漢字2字の非典型語78語をターゲット刺激とする音読実験を行った。大学生・大学院生45名には、ターゲット刺激と非実在語100語をランダムな順で音読してもらい(mixed condition)、別の大学生・大学院生22名にはターゲット刺激のみを音読してもらった(pure condition)。Mixed condition条件においてのみ、非典型的な読みが1文字目にあるターゲット刺激の方が、非典型的な読みが2文字目にあるターゲット刺激よりも、音読潜時が有意に長くなるという非典型的な読みの位置効果がみられた。両実験を通して、文字レベルの処理にて生じると考えられている単語属性効果(文字数効果と非典型的な読みの位置効果)が認められたことから、漢字音読においても文字レベルの系列的な処理が存在すると思われた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。