Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
ヒストンの翻訳後修飾の動的側面を理解するためには、「どのタイミングで」「どの細胞において」「どの種類の修飾が」「ゲノム上のどの位置で」生じるのかを調べることが必要不可欠である。本研究では特に、生細胞においてゲノム上の位置情報を可視化するための手法として、CRISPR/Cas9システムを利用することを試みた。材料として、遺伝学的な操作が容易なモデル真核生物である出芽酵母を用いた。遺伝子座を特定するツールとして、化膿レンサ球菌の持つ防御機構に関連したエンドヌクレアーゼであるCas9の変異体dCas9(エンドヌクレアーゼ活性を持たない)にGFPと核移行シグナルを連結したタンパク質dCas9-GFPを用いた。可視化の効率を評価するにあたっては、モデル標的としてCUP1遺伝子(コピー数は菌株によって1-20の範囲)を用いた。出芽酵母においてdCas9-GFPとともにCUP1遺伝子に対するガイドRNA(gRNA)を発現させ、蛍光顕微鏡で観測した場合、CUP1遺伝子を10コピー程度もつ菌株において、核内かつ核小体外の位置にdCas9-GFPの輝点が観察された。標的配列部分を持たないgRNAを発現させた細胞およびgRNAを発現させていない細胞においてはdCas9-GFPの輝点は観察されなかった。CUP1遺伝子に対するgRNAを複数設計しそれぞれをdCas9-GFPとともに発現させたところ、gRNAの配列に依存して、dCas9-GFPの輝点が観察される頻度に差異があった。以上の結果は、dCas9-GFPとgRNAの組み合わせによって特定の遺伝子座を可視化できる可能性を示すものである。現在、より少ないコピー数の遺伝子を検出しうる手法を開発するとともに、外的刺激の有無(CUP1遺伝子は銅の添加で発現上昇を示すことが既知)によるdCas9-GFP輝点の挙動の変化を観測することを試みている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。