Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】当農場では, 単為結果性トマト‘京てまり'を用いた冬季無加温栽培の実証試験を行っている. これまでの試験で, ハウス内を保温すれば無加温の低温条件下で収穫が可能であるが, 低温により収量が減少することが明らかにされている. 一方, 近年堆肥の発酵熱を利用したハウス暖房の研究が行われている. 発酵熱による暖房は非常に安価であるが, 暖房効果は小さい. しかし, 冬季無加温栽培では極端な低温を回避できれば良いため, 堆肥の発酵熱の利用は非常に有用であると考えられる. そこで本研究では, 単為結果性トマトの冬季無加温栽培における収量の改善を目的として, 堆肥の発酵熱の利用について検討した. 【研究方法】当農場の硬質フィルムハウス(面積 : 5a)に畝幅160cm, 畝の中央に幅40cm・深さ20cmの根域制限床を設置し, 2014年10月18日に株間40cm, 条間20cmの2条・千鳥植えで単為結果性トマト‘京てまり'を定植した. 2014年11月14日から保温のためハウス内に内張りを展張し, 2014年11月24日から液肥を1週間に2回施用した. PVA製のトンネルを2014年11月25日に設置し慣行区と処理区を2区ずつ設け, 1区あたり34株栽培した. 2014年12月2日に半熟馬糞堆肥と稲わらを処理区の畝間に敷き詰め, 発酵促進剤を施用した. それぞれのトンネルにおいて高さ1m付近の気温と炭酸ガス濃度および地温を測定した. また, 2014年11月26日から2015年3月15日まで2週間ごとに選択した6株の茎長を測定した. 収穫時に各トンネルから収穫した果実の総重量, 総収穫個数および無作為にした選択して果実5果について糖度を測定した. 収穫は2014年12月8日から2015年3月24日まで行った. 【研究成果】慣行区と処理区で栽培期間中の平均最低気温に大きな差は見られず, 平均炭酸ガス濃度は処理区の方が若干高くなった. 慣行区と処理区で株の成長量と1株当たりの平均収穫重量に大きな差は見られなかったが、平均糖度は処理区で有意に高くなった. これらの結果から, 堆肥発酵熱による加温の効果は小さいものの, 炭酸ガスにより果実品質を改善できる可能性が示された. 今後, 堆肥発酵熱を利用するためには, 堆肥の施用量や発酵を増進させる管理方法などの検討が必要と考えられる.
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