Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】肺Mycobacterium avium-intracellulare complex(MAC)症は結核に類似した病変を生じ、非結核性抗酸菌症の8割を占める重大な呼吸器疾患のひとつである。MAC菌は、特異糖ペプチド脂質(glycopeptidolipid, GPL)抗原の血清凝集反応によって、28種類の血清型に分類されている。臨床分離株の血清型分布には偏りがあり、特定の血清型菌がヒトに対して強い病原性を示すことから、各血清型GPLと病原性との関連が示唆される。 本研究では、細胞内感染したMAC菌のGPL分子種組成変化を検証することにより、細胞内感染におけるGPLの役割を解明することを目的とする。 【研究方法】MAC菌から単離精製した天然型GPL(intact GPL, iGPL)を用いて、ヒトの自然免疫受容体のひとつであるTLR2を強発現した細胞を刺激し、各天然型GPLの宿主応答について評価した。また、MAC菌Ku11株をマウスマクロファージ系細胞株に感染させて、感染菌と非感染菌の天然型GPL分子の経目的な組成変動を質量分析計により解析した。 【研究成果】MAC菌Ku11株には、アセチル(Ac)基の結合数とその位置の違いから6種類の天然型GPLが存在し、このうちAc基が一つ付加したmono-Ac iGPLだけがTLR2に認識されることを見いだした。さらに、細胞内感染菌において、TLR2に認識されないtri-Ac iGPLが経日的に増大するが、非感染菌では減少することを明らかにした。 以上から、MAC菌Ku11株はAc基によってGPL糖鎖を修飾することで、TLR2による検知から逃れている可能性が示唆された。今後、さらに天然型GPLのAc基転移酵素遺伝子の動態変化を追うことで、細胞内感染におけるGPLのAc基修飾と免疫回避との関係がより明確になると考えられる。
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