Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 自覚的脚長差に対する補高の有効性について明らかにすることである. 対象は, 高知大学医学部附属病院にて片側THAを施行した91名とした. 測定時期は, 術前, 術後2週, 6ヵ月, 1年に行った. まず, 自覚的脚長差は, 短いと感じる側の足底に5mmの厚板を段階的に増し, 脚長差感が消失した厚板の厚みとした. 自覚的脚長差を認めた場合, 通常の靴と自覚的脚長差を補正する高さの補高靴を履いた場合で評価を行った. 評価は, 歩行(10m歩行速度, 圧力分布測定システムGait scan)とバランス(TUG)を測定した. 統計解析は, 補高無しと補高有りでの比較をWilcoxonの符号不順位和検定を行い, 有意水準はp<0.05とした. 結果, 片側THA後, 自覚的脚長差を認めた患者は, 術後2週 : 24名(26%), 術後6ヵ月 : 7名(8%)であった. その内, 自覚的脚長差とX線上の脚長差の誤差が5mm以上あり, 自覚的脚長差を過剰に体感している者は, 術後2週 : 19名(21%), 術後6ヵ月 : 2名(2%)であった. 自覚的脚長差を過剰に体感した場合, 術後2週では, 補高無しに比べ補高有りで10m歩行速度と術側遊脚時間の改善を認めた(p<0.05). しかし, 術後6ヵ月では, 自覚的脚長差の残存が少数により統計的な検討が困難であった. 今回, 自覚的脚長差を過剰に体感している者に, 即時的な対応として補高を使用した. 自覚的脚長差に対し補高で補正を行うと, 歩行速度の向上や術側遊脚時間の延長を認めたため, 自覚的脚長差に対する一つのアプローチ方法として考えられる. しかし, 補高は実際の脚長差を延長する場合があり, 他部位への負担が増大する危険性がある. また, 自覚的脚長差の原因は様々あり(骨盤・体幹・膝), 補高だけでのアプローチは困難と考える. また, 6ヵ月後の自覚的脚長差の残存が少数のため長期的な効果の検討ができていないため, 今後は, 長期的な状態での補高の有効性について検討をしたい.
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