Research Project
Grant-in-Aid for Research in Natural Disasters
1985年7月19日、イタリア北部ドロミテ地方のテゼロ町スタバにおいて、蛍石鉱山の鉱滓ダムが突如決壊し、それによって発生した泥流が47軒の建物を全壊流失させ、268名の人命を奪うという災害が起った。この災害の実態を究明し、我が国での類似災害の防止に役立てるために、9月10日〜21日の期間に現地を訪れ、監督官庁・大学等での資料収集とダム決壊現場の調査を行うとともに、我が国の鉱滓ダムとその災害資料の収集に当った。以上の調査に基づいて、泥流災害の実態、ダムの決壊状況と流出土砂量、決壊原因・機構、泥流の流下過程ならびに我が国の鉱滓ダムの実態について考察した。まず、ダムの決壊状況については、上・下2段からなる鉱滓堆積場の決壊形状と周辺地形から、上ダム左岸側で決壊が始まり、それが右岸側へ伝播するとともに、その流出土砂によって下ダムが一気に破壊流失したものと推測した。また、流出土砂量は18.6万【m^3】、流出水量は9.7万【m^3】、流出土砂の容積濃度は0.48と推算された。つぎに、決壊原因としては、1)上ダムの嵩上げによる荷重増、2)地山の湧水によるスライムの液状化、3)上ダムの湧水圧による法尻崩壊、4)排水管の閉塞、5)上ダム湛水面の堤体への近接などが指摘され、このうち1)と3)に関連して土質試験ならびに浸潤面の上昇に伴う堤体の安定解析を行い、すべり破壊の可能性を示した。一方、泥流は600mの山腹斜面とスタバ川3.8Kmを約6分間で流下し、アビシオ川との合流点で約12万【m^3】の土砂が堆積した。この泥流の流速を痕跡水位差から推算するとともに、泥流のハイドログラフをキネマティック・ウエーブ法で計算し、スタバ川での泥流段波の低減特性とカバレーゼの地震計の振動記録との対応を説明した。最後に、我が国でも同種の災害が昭和10〜20年代に発生しており、類似ダムの安全管理と事故時の災害予測の重要性を指摘した。
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