Research Abstract |
地球内部で起こる鉱物結晶の成長過程と関連した重要な問題として、異なる成長面ごとに化学組成が違った"セクター構造"の形成がある。 これは、まさに、溶液から成長する結晶に含まれる第二元素に関する有効分配係数keffと成長速度Rの異方性の問題である。 この研究の第一の目的は、keffとRを母液の過飽和度,化学組成,および結晶表面の方位の関数として同時に求めることにある。 また、第二の目的は、元素の分配に対するこのような非平衡効果(速度論的効果)を直接反映した鉱物結晶の組成分布のデータとこの理論の結果を比較して、その結晶が成長した母液の化学組成を推定することである。 昭和60年度には、この問題にとって本質的な要素を含む最も簡単な系として2成分系の連続理想溶体をとりあげて次の研究成果を上げた。 1)結晶表面での質量保存を考慮して溶液中のA,B元素の拡散方程式を解いて、溶液中の各元素の分布を求めた。 2)結晶表面でA,B元素が結晶格子に組み込まれる結晶化フラックス【γ_A】,【γ_B】が、各元素の溶液と結晶での化学ポテンシャル差Δ【μ_A】,Δ【μ_B】にそれぞれ比例するとして、すなわち【γ_A】=【β_A】Δ【μ_A】,【γ_B】=【β_B】Δ【μ_B】として結晶成長速度Rと有効分配系数keffをセルフ・コンシステントに解く方法を確立した。 3)上の方法で得られた結果とこれまでに報告されている鉱物結晶の実験結果を比較したところ、各元素の結晶化フラックスとして 【γ_A】=【β_A】Δ【μ_A】+【β_(AB)】Δ【μ_B】,【γ_B】=【β_(AB)】Δ【μ_A】+【β_B】Δ【μ_B】 の形式を用いる必要のあることがわかった。 今後、ステップの運動による沿面成長機構と上式の係数【β_A】,【β_B】,【β_(AB)】の関連を考えることによって、Rおよびkeffの異方性が解明されるであろう。
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