Research Abstract |
昭和62年度には, Ge/GaAsヘテロ界面の固相反応による結晶構造の変化を, 角度分解X線光電子分光法を用い解析し, 併せてバンド・ギャップ内フェルミ準位の変化を測定し, 両者の知見をもとにオーミック接触形成機構の研究を行った. 化合物半導体の電極界面では複雑な固相反応が生じ, これにより電気特性が決められてしまうので, Ge/GaAs系についても加熱処理に伴う固相反応を詳しく調べた. これまで比較的低温でつくられたGe/GaAs界面は原子スケールで急峻であるとされてきた. しかし, 室温蒸着界面においてさえも, 表面第一層のAsがGeとの置換反応により堆積Ge層の最表面上に位置するのみならず, GeがGaAs下地中へ拡散し, GaとAsの両置換位置を占めることを本研究で明らかにした. これはGe吸着熱の解放により促進されるものと考えられ, 低温でも界面での拡散が生じてしまうことを意味している. この室温蒸着ヘテロ界面を580°Cで加熱すると更に拡散が生じ, その拡散係数は3.3×10^<-19>cm^2S^<-1>であった. また, 580°Cで加熱したGaAs基板にGe蒸着した界面においても, GeはGaとAsの両置換位置へ拡散し, その拡散係数は1.0×10^<-16>cm^2S^<-1>であった. このようにGe/GaAsヘテロ界面構造は, 加熱処理により著しく変化することを明らかにした. 又, フェルミ準位は清浄n-GaAs(001)-C(8×2)表面において, すでにバンド・ギャップ中に位置し, 0.9eVのショットキー障壁を形成しているのを見い出した. そしてこのフェルミ準位のエネルギー位置は, 室温でのGe蒸着, 580°Cでの加熱処理, 及び蒸着Ge膜厚に依らず変化しなかった. このように, Ge/GaAs(001)界面においてショットキー障壁は強い界面固相反応にもかかわらず安定であることを見い出した. 更にオーミック電極形成のためには, 金属電極物質の役割を同様の方法で調べていくことが不可欠と思われる.
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