Research Abstract |
本年度はこれまで連続観測を続けて来た桜島火山や、毎年夏季に集中、総合的にくり返されて来た北海道の有珠山,十勝岳,樽前山,雌阿寒岳,アトサヌプリ,知床硫黄山の諸火山,及び木曽御岳,草津白根山,霧島山,開聞岳の各火山,それに昨年11月から活発な活動をしている伊豆大島の口火山を主として取上げた。それらの火山の噴出ガス,凝縮水,温泉水,火山昇華物、変色海水などを主な対象とした。その中の主要ガス成分として弗化水素,塩化水素,二酸化硫黄,硫化水素,二酸化炭素,窒素,水素,メタン,一酸化炭素,ヘリウム,アルゴン等を、また凝縮水,温泉水中の水素イオン濃度、塩素,硫酸根,カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなど、及び以上の試料の硫黄,水素,酸素の同位体比を測定した。また火山昇華物の鉱物組成を同定し、変色海水の珪素,鉄,アルミニウムなども分析し、それらの成分変化を他の観測法の結果と対比して各火山の活動度の推定を行った。 その結果から、これらの方法での各火山の活動度を判断すると、桜島火山では爆発回数や降下火山灰量が前年に較べて約半減したとは言え、依然として高い活動度を保っており、噴出ガス中のHCI/【SO_2】比や水素濃度は、噴火活動の激化にさきがけて増加する傾向をくり返している。北海道の諸火山では、有珠山,十勝岳,樽前山など活動ピークが一応過ぎたと考えられる現在でもその噴気温度,活動成分などはなお高いレベルを保っており、アトサヌプリ,雌阿寒岳,知床硫黄山などはそれにより若干活動の低い傾向を示していた。また木曽御岳,草津白根山,霧島山,開聞岳等は現在小康状態を保っていると言えよう。伊豆大島では今回の噴火開始直前の10月21日山頂火口ガス中に水素の高濃度異常を発見し、噴火予測に寄与したが、沿岸の変色水は見掛け上の盛大さに較べ、その化学成分から見る限りではその活動度はさほど高いものではなかったと考えられる。
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