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¥7,000,000 (Direct Cost: ¥7,000,000)
Fiscal Year 1986: ¥7,000,000 (Direct Cost: ¥7,000,000)
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Research Abstract |
ラット肝化学発癌過程で前癌病変の良いマーカーとして同定されたダルタチオンS-転移酵素P型(GST-P)およびこれと免疫学的性質などで関連性のあるヒト胎盤型GST-πの腫瘍マーカーとしての諸性質を検討して以下の成績を得た。1.GST-Pについて。抗GST-P兎抗体を用いた免疫学的定量法や免疫組織化学的方法により、多くのラット肝化学発癌剤によって誘発される肝前癌病変巣はGST-P陽性単一細胞またはミニ巣として極めて早期(DENなどでは一週以内、FAA,3'-Me-DABでは3〜4週後)から検出可能で、感度、特異性において従来の前癌マーカー酵素よりはるかに優れていることが確認されたが、非突然変異性肝発癌剤の一部、例えばクロフィブレートではGST-P陽性巣が誘発されないことが判明した。また硝酸鉛1回(100μmol/kg)投与後数日にして肝小葉全体にGST-Pが誘導されることが新たに認められ、遺伝子発現機構解明上注目された。われわれのGST-P抗体は国内外でラット、ハムスター肝(膵)化学発癌過程の解析に、発癌剤、発癌修飾因子の検索に広く活用されつゝある。2.GST-πについて。ヒトGST-πは蛋白化学的にはラットGST-Pと異なるが免疫学的共通抗原性を有し、特にN末端のホモロジーが高い。GST-π兎抗体を用いた免疫組織学的方法(ABC,PAP法)でGST-πは分化型肝癌の一部,食道癌,胃癌と膵臓癌(ともに粘液癌を除く),大腸腺腫および癌,子宮頸部異型上皮および癌,乳癌,皮膚癌(ページェット細胞,有棘細胞癌,悪性黒色腫)などに種々の程度に細胞質のみならず核質にも発現することが認められた。定量的には、食道癌,大腸癌,子宮頸部癌でそれぞれ正常部分の約10倍上昇していた。担癌患者血清中のGST-π量は、ELISA法で正常のcut off値を3.7mg/mlとすると、胃癌,食道癌の30〜50%に5〜10倍の上昇が認められ、予後や再発のモニターとして役立つことが示唆された。
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