高分解能イオン散乱法を用いた陽子エネルギー損失の衝突径数依存性に関する研究
Project/Area Number |
61212010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Special Project Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松波 紀明 名大, 工学部, 助手 (70109304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 健治 名古屋大学, 工学部結晶材料, 教授 (10023144)
伊藤 憲昭 名古屋大学, 理学部物理, 教授 (90022996)
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Project Period (FY) |
1986
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1986)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1986: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | イオンビーム / 表面各層分析 / 表面構造 |
Research Abstract |
申請者らの開発した高分解能イオン散乱装置(分解能20〜100eV)を用い、今年度はW(111)表面における100keVの【H^+】のエネルギー損失分布を100eVの分解能で測定した。入射角及び出射角は各々表面から6度である。W(111)表面上の〈110〉軸にそってビームを入射させた時、エネルギー損失の増加とともに鋭く立ち上り、約700eVにピークを持ち、2keVまで強度が除々に小さくなり、2keV以上では強度がピーク強度の1/10以下となるエネルギー損失分布を得た。散乱角12度の弾性散乱エネルギー損失は24eVであるからこの分布は非弾性エネルギー損失を表す。W(111)表面の幾何学的考察から、このエネルギー損失分布は表面第1,2,3層からの散乱によるものであり、第4層以下からの散乱陽子は表面第1〜3層の原子によって阻止されていることがわかった。 非弾性衝突エネルギー損失が陽子のW中での走行距離に比例するという近似ではこの実験結果を説明できないため、我々は陽子の軌道を2体衝突近似を用いて追跡する模擬計算を行った。この時1原子当りの非弾性衝突エネルギー損失を衝突径数の指数減衰関数であると仮定した。計算結果より、1回弾性散乱の他に2回弾性散乱の寄与が30%程度あること、計算結果が定性的に実験結果と合うことが明らかになった。ただし実験結果の分布は計算結果の分布より広い。これは計算にエネルギー損失のばらつきを考慮していないためである。今後、エネルギー損失分布の入射方向依存性を測定し、計算結果との比較よりエネルギー損失の衝突径数依存性に関する知見を得る。又、酸素等を吸着させた表面におけるエネルギー損失分布の測定から、吸着酸素等の位置、酸化反応等の初期過程に関する知見が得られる可能性は高い。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)