アビダルマにおける存在論の体系的研究-翻訳伝承学の観点から
Project/Area Number |
61510014
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
印度哲学(含仏教学)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
渡辺 文麿 近大, 教養部, 教授 (50088259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋本 勝 近畿大学, 教養部, 講師(非常勤)
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Project Period (FY) |
1986
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1986)
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Budget Amount *help |
¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1986: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Keywords | 「法蔵部」の原意 / 法蔵部的一切法 / 長阿含 / 衆集経 / 教団分裂 / ダルマの認識論的解釈 / 部派的特徴 |
Research Abstract |
現存の阿含やニカーヤの経典を始め、後の一連のアビダルマ論書は全て或る特定の部派が伝えたものであるから、これらの資料には部派的特徴が随所に見られる筈である。部派的特徴の形成は仏陀所説の色々なダルマの解釈、伝承、翻訳などの仕方と密接な関係にある。仏陀の教説を忠実に解釈、伝承したと言われる保守的上座部からも、後には多くの部派が誕生するに至っている。それは、仏陀所説のダルマをそれぞれの部派的立場から解釈、伝承、翻訳、組織化、体系化する必要があったからであろう。この問題は、各部派における仏陀所説のダルマの存在の有り様にかかわってくる。そして、この有り様は当然ダルマの認識の仕方にもとづくものである。『長阿含』は法蔵部の所伝であろうと言われている。その中の「衆集経」は、仏陀が教団分裂を防ぐ為に、舎利弗に仏陀の教説を一法から十法まで集めさせたものであるが、この経はなぜ上座部、説一切有部などの伝えるものと大きく相異するのであろうか。この点に関して、「衆集経」に見られる色々なダルマは法蔵部的な「一切法」の認識論的解釈にもとづいて組織化されたもの、と私達は推論するのである。法蔵部の「法蔵」とはdharmaguptaを語源とするが、それは「ダルマを保護する」と言う意味。つまり、認識の対象としてのダルマを保護する立場を執ることである。このように見てくると、「衆集経」に見い出されるすべてのダルマは法蔵部的「存在の法」である。換言すれば、法蔵部的認識論から生ずる存在の法と、説一切有部、上座部、経量部などの阿含、ニカーヤ,アビダルマ論書などに見られる「存在の法」とが、数や名称の上で相異するのは当然と言える。このような見方が真になるためには、諸部派の特徴をより細かく研究する必要がある。そして、各部派がダルマをどのように解釈、伝承、翻訳、組織化したかを研究することによって存在の法の体系的研究も完成する。
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Report
(1 results)
Research Products
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