Project/Area Number |
61510018
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
倫理学
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
市倉 宏祐 専修大, 文学部, 教授 (20083678)
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Project Period (FY) |
1986
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1986)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1986: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 存在論 / 倫理学 / 対自 / 即自 / 対自-即自 / 構成する弁証法 |
Research Abstract |
まず、サルトルの倫理学に関する遺稿は"Cabiers pour une morale"と名付けられた、およそ600頁にもわたる大部なものであり、そのうえ何らの章分けも行われているものであるので、何よりもまずこの倫理学遺稿の思想内容を正確に把握することにつとめた。さらに、サルトルの倫理学といえば、すでに『存在と無』の最後においてその刊行が予告されていたものであるが、そこでの内容は〈対自-即自〉が実現されえないものであることを自覚した上で、あえてこうした〈対自-即自〉を投企するところに人間の本来のあり方を認めるものであった。この予告された倫理学に対して、この遺稿の倫理学がその内容をいかなる点で発展させているのか、またそのことが何を意味しているのかといったことを解明することにつとめた。この解明は、とくに『存在と無』の対自の概念がこの遺稿においてどのように展開変化しているのかといったことに焦点をあてて行われた。なお、この点については、『存在と無』における〈対自〉と〈即自〉と〈対自-即自〉の三者の関係が、『弁証法的理性批判』において〈構成する弁証法〉と〈反弁証法〉と〈構成される弁証法〉の関係に発展したことを考察の背景において、この遺稿の対自の概念を吟味した。また、『存在と無』はどこまでも存在論の立場をとるものであるが、もともと存在論は〈あること〉を問題とするものであるから、そこから〈あるべきこと〉を問題とする倫理学をひきだすことは不可能であるとされてきた。にも拘らず、サルトルはあえて倫理学を確立しようとしているわけであるが、この難点をかれはどのように克服しようとしたのかを解明することにつとめた。さらにこの遺稿は結局は未完に終ったわけであるが、何故そうならざるをえなかったのかということを上記の諸点との関係において考察した。なお、かれがあえて倫理学に執着したことがかれにとってどんな意味をもっているかを考察した。
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