芸術の〈限界現象〉に関する美学的考察-1920年前後の芸術の新たな動向について-
Project/Area Number |
61510020
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
美学(含芸術諸学)
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
岩城 見一 京市芸大, 美術学部, 助教授 (40025086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 喬夫 大手前女子大学, 文学部, 助教授 (30098230)
魚住 洋一 京都市立芸術大学, 美術学部, 講師 (10168669)
渡辺 真 京都市立芸術大学, 美術学部, 講師 (50117868)
潮江 宏三 京都市立芸術大学, 美術学部, 助教授 (60046373)
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Project Period (FY) |
1986
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1986)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1986: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | オブジュ / ダダイズム / ロシア前衛芸術 / ドイツ表現主義 / 実験造形 / 作品概念の解体 / 美的体験の現在性 / 機械的環境 / 構成主義 / 消費社会 / 記号化マニェリスム / 綜合芸術 / 抽象形式 |
Research Abstract |
1920年代、それは芸術家が機械的環境を真に意識し始めた時期である。この意識は、ロシア構成主義にはっきり出てくるが、それはまた古典的芸術概念の崩壊と、作品の芸術性の無化の始まりとしても捉えられる(潮江)。現代はまた、高度に発達した消費社会の時代であり、ボードリアールも指摘するように、そこではモノが有用性によってではなく単なる差異によって消費される記号に化し、この中にあって芸術作品も消費される記号に変ずる。デュシャンから始まる芸術のオブジェ化は、現代芸術の記号化の先駆的現れとして捉えられる(魚住)。今世紀初頭はまた、新たな反自然主義としての表現主義の時代でもあり、それは抽象主義,マニエリスム,綜合芸術の理念の三つの切り口から捉えられる。これにはそれぞれ代表的理論家が関与していた。ヴォリンガーは抽象形式を原始および中世美術と、ドヴォルザークはマニエリスムをグレコ芸術と関連づけて論じ、グロピウスは綜合芸術の理念をモリス的ロマン主義に見出した(太田)。これらの動向の中で、現代芸術は多様な実験的試みを作品として呈示してきたが、この新しさの追求の中で芸術家は作品概念の大きな変容に直面せざるをえなくなった。それゆえわれわれは、これら造形実験が作品概念にとりいかなる意義を有し、またそれがいかに作品像を変化させたかにつき実証的に検証した(渡辺)。新たな芸術の源流を辿ることの内で、現代の哲学的美学の中心問題も明らかになってきた。それは一方で真理が生起しまた貯えられる場としての作品概念の解体であり、これに代る新たな芸術的価値としての美的体験そのものへの着目とそこからくるカント美学の見直しであり、また他方では、人間存在の無根拠性の自覚から、作品の総体性に代る部分性,反省性の強調である。現代の哲学的美学におけるこれら二つの中心問題は、今世紀初頭の新たな芸術運動の進展の中で顕在化してきたものとして捉えられる(岩城)。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)