季翠蓮・劉全進瓜物語の研究-清代における『西遊記』の展開をめぐって-
Project/Area Number |
61510224
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
中国語・中国文学
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
磯部 彰 富大, 人文学部, 助教授 (90143841)
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Project Period (FY) |
1986
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1986)
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Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 1986: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 道書 / 乾隆帝の昇平宝筏 / 内府本進瓜記 / 儒教規範下の呂全と陶氏 / 下層民と口承文芸 / 翠蓮宝巻に見られる唐三蔵の神格化 / 下層民こ知識欲 / 清代西遊記の二極分化 |
Research Abstract |
清初の西遊証道書は、道書的色彩を加えられ、清朝の文字の獄から『西遊記』を除外することに成功した。そのため、康煕帝・乾隆帝をはじめとした官僚読書人は、安心して『西遊記』を読み、戯曲化された『昇平宝筏』『進瓜記』等を李朝の朝貢使等と観賞した。一方、下層民も社会の安定によっていささかの余裕を持ち、口承文芸化された『西遊記』を受容した。康太宗入冥を扱った李翠蓮・劉全進瓜の物語も、『西遊記』の中から摘出され、単独に流布した。本来、明刊本西遊記に収納されて伝わったこの物語は、『西遊記』諸版本(世徳堂刊本,唐僧西遊記,西遊証道書,西遊真詮など)においては、おおむね異同がない。ところが、清代になって単独に流布すると、受容者層の別によって、大きく差異を生ずることとなった。乾隆帝が張照に命じて編撰させた昇平宝筏劇では、劉全進瓜の物語が削除された。その一方で、進瓜記が編まれ、単独の演劇となった。内容も小説西遊記と異なり、呂全・陶氏夫婦が主人公で、妻の陶氏が不善の人ゆえ入冥したとし、小説の善人李翠蓮像とは正反対に描かれる。釣魚船も大同小異の内容であるが、おそらく明人の佚書に拠って両劇が編纂されたと思われる。一方、下層民の社会では、秦腔の〈十万金〉劇・豫劇の〈打経堂〉〈李翠蓮游地獄〉〈劉全進瓜〉、或は宝巻の〈〈翠蓮宝巻〉,唱本馬頭調〈李翠蓮〉,唱本〈李翠蓮盤道〉など様々な形態をとって、人々に受容された。内容は、基本的には霜遊記物語に則るが、唐三蔵らの一行が李翠蓮を窮地に陥入れるのは、仏命によるものとし、継子いじめ談などを増入する。〈李翠蓮盤道〉に致っては、唐三蔵と李翠蓮が知識を披露するという、本来の内容とは全く別な方向を示している。このように、清代の李翠蓮・劉全進瓜の物語は、読書人と下層民に受容されたものの、大きく改作され、『西遊記』以外、別個の物語が二種以上共存していた情況にあった。
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