Research Abstract |
1)資料の収集と分類-この研究で第1の目標は, 叙事詩に関する作品の収集および関連資料の入手であった. これはこれまでの分野での日本の研究がほとんどなかったため, まずなされるべきことで, その結果は「西北中国諸民族叙事詩関係作品目録」としてまとめることができた. これによって, 西北中国から中央アジア, 西アジアにかけて, いかなる叙事詩が分布し, どのような異文があるのかの概要を知ることができるようになった. これまで, 日本ではこのような目録がなっかたため, 今後の研究にとって重要な基礎資料とすることができるわけである. しかし, この研究に対象とするのは, 外国における文学作品であるため, すべての原典を入手できたわけではなく, また入手したものにも限りがあり, 今後の研究の課題として残されている. 2)作品の分析研究-この研究では「悲恋転生〓」をテーマとした叙事詩について, 具体的に分析を行うことにより, 叙事詩の特色を明らかにし, またその研究方法を発展させることを第2の目標においた. ウイグル族, カザフ族, キルギス族などの叙事詩について検討した結果, 報告書および学会誌へ発表したように, これらの作品が西北中国のみならず, 中央アジア, 西アジアに広く伝わり, 世界諸国の叙事詩に共通するテーマであるもの「悲恋転生〓」に属する物語を述べていることが明らかとなり, そこには東西文明の流れが反映され, 民族の移動の歴史が反映されていることも伺がわれた. 同時に, 「作品目録」の作成は, そのことを裏づける資料となり, 作品相互の関係をも明らかにしたことになる.
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