日本植民政策学の系譜の思想史的研究-脱植民地化の視点から-
Project/Area Number |
61520029
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Politics
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
森山 茂徳 新大, 教養部, 助教授 (50107497)
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Project Period (FY) |
1986
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1986)
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Budget Amount *help |
¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1986: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Keywords | 「脱植民地化」構想 / 精神植民 / 世界社会主義 / 世界平和 / 自主的国家の連合 / 正統派理論 / 植民地経営論 |
Research Abstract |
日本植民政策学に内在する思想を系譜として辿った時、脱植民地化の視点をとる限り、次のような顕著な特色と趨勢とが明らかとなった。 1.「脱植民地化」構想の源流-新渡戸稲造・「脱植民地化」を必ずしも体系的ではないが明確に提示したのは、新渡戸をもって嚆天とする。彼は植民の終極目的を「地球の人化と人類の最高発展との実現」にあるとし、力・法・文化という国家の最大目的の中でも文化(精神植民)を重要視した。第二に彼は、植民地の存在を病的状態・一時的とし、植民問題の消滅を趨勢とした上で、世界社会主義の実現を唱えた。このように新渡戸は世界の趨勢と自らの理想とを結合させ、「脱植民地化」の方向を指示した。この新渡部の植民政策論が東大の矢内原忠雄,北大の高岡熊雄等の人々に継承されたのである。 2.「脱植民地化」構想の体系化-矢内原忠雄・矢内原は新渡部の理想と認識とを継承し、それらをほり下げ体系化した新渡部の後継者である。彼は植民政策の目的を植民地の平和的分離・独立とし、世界平和をその理想とした。即ち独立した自主的国家より成る世界の出現こそ平和の基礎であり、正義であるとし、その趨勢の理由を政治的・経済的・社会的分析に基づいて体系化した。これこそ新渡部の意志を受継いだ「脱植民地化」構想の体系化である。 3.植民政策論の狭少化。しかしながら、植民政策論の新渡部-矢内原と継承された正統派理論は、日本では1930年代になると忘却・放棄され、雨後の筍のように数多くの植民政策論者が日本帝国の膨張を前提とした植民地経営論を展開する。それは「脱植民地化」構想を放擲した技術論の領域への狭少化であった。しかし、新渡部-矢内原の正統派理論の正しさは、その学問的規模の故もさることながら、日本の敗戦によって立証された。日本は植民地を喪失してもなお、否喪失したが故に、経済的繁栄をとげた。しかし精神の領域は果して「脱植民地化」したか。
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