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¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1986: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
本研究では多くの有機錯塩を作成し、結晶の次元性と物性の関係を調べた。カチオンとなる有機分子としてBMDT-TTF,BEDT-TTF等、アニオンとして、TCNQ,【I_3】,I【Br_2】,【I_2】Br,Au【I_2】,Au【Br_2】,等を用いて結晶作成を行った結果、一次元性の強い物質から二次元性の強い物質までいろいろの性格をもった有機錯塩を得た。その中でまずβ″-【(BEDT-TTF)_2】Au【Br_2】に注目した。結晶構造に基づいたエネルギー帯構造の計算を行なった結果、この物質では一次元性と二次元性が共存していること 明らかになった。次に電気伝導度の測定を行い、低温まで金属的であることを確かめた。さらに、低温で磁気抵抗の測定を行い担体(正孔)の散乱時間に関する知見を得た。結論としてこの物質では二次元性が加わったことによって低温まで金属的な性質を持つに至ったものと解釈した。さらに、二次元性の強い有機錯塩を作れば低温まで金属的な物質が期待でき、その中には超伝導性を示す物質があるはずであるという考え方で結晶作成を続けた結果、二種類の新しい有機錯塩の合成に成功した。我々はこれらを、θ-【(BEDT-TTF)_2】【I_3】,κ-【(BEDT-TTF)_2】【I_3】と命名した。この二つは共に二次元性が強く、金属的な伝導性を示す。特に重要なことは、両者とも約3.6K以下で超伝導性を示すことである。これは我国で発見された有機超伝導体として第一号,第二号である。二つの物質について、結晶構造,エネルギー帯構造,電気伝導度の異方性及び温度依存性を調べた。又超伝導特性の異方性,臨界磁場,コヒーレンス長等に関する知見を得た。さらに、常伝導状態での磁気抵抗が異常な振舞をすることを発見し、詳しく調べた。磁気抵抗の大きさに対する磁場の方向依存性の測定結果から、磁気抵抗異常は結晶中の有機分子の配向に関係していることを推定した。
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