Research Abstract |
1982年浦河沖地震を住宅内で体験した浦河町の人々55名の行動記録の分析をふまえて、1)地震の揺れの最中に住宅内で展開された行動の種類を示し、2)それら行動を各人の属性、その住宅での役割、同時滞在者との関係等、社会的要因との関連で分析し、3)地震時住宅内の行動として妥当な行動パターンシナリオの抽出を計り、4)その行動を補完するような住宅の空間構成の考え方を例示した。(1)揺れの続いた約45秒間の行動は、火気の始末,避難,防護保護,物の被害防止,指示,待機,行っていた行為の継続,行動不能,の9種に大別される。(2)これら行動の選択は各人のその住宅内での立場、役割同時滞在者(子供、配偶者など)の有無が密接に係わっており、子供とのみ一緒にいた主婦が最も多種類の行動に従事していて、そこに主人が加わると行動の分担が生ずるが、夫婦のみの場合の主人や家族と共にいた娘、息子では待機、避難が主たる行動で、客の場合は避難か行動不能であった。(3)住宅内で災害時に主体的な行動がとれるのは、家事に責任を持ち家内部の状況を熟知している主婦である事が多く、彼女らがその責任感から行う火気の始末子供や家財の保護とそれに続く避難といった行動は決して否定されるべきものではない。(4)建築的な対処としては、それら一連の行動をできるだけ早く安全に完遂できるように空間構成上の配慮をするところにあり、一つの提案として、居間を地震時の責任行動を行うための拠点と避難場所に位置づけ、構造的にはそこを剛なフレームで囲い、そこから子供や台所等の火気の安全確認ができるよう各居室の中心におくと共に、庭やバルコニーなどの外部の安全空間に接するレイアウトとし、さらにそこに貴重品を置いておいたり、日頃から家族全員の集合場所にしておき、日常的な生活習慣の延長として地震時の必要な行動がとれるようにしておく考え方を示した。
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