Research Abstract |
ハムやソーセージを製造する際の塩漬による良好な香味形成へ肉内在プロテアーゼを積極的に貢献させる条件を明らかにするために、豚筋肉ホモジネートを2%食塩と1mMNa【N_3】(防腐剤)存在下、4.0,5.7,7.0の各pHに4℃で5日間貯蔵し、各種の変化を調査した。また0.02%亜硝酸ソーダ(Na【NO_2】)や1mM【Ca^(2+)】添加による変化も調べ、以下の結果を得た。1.タンパク質の変化:いずれのpHでも分解消失するタンパク質は認められなかったが、pH4では分子量(Mr)1万以下のポリペプチド類が増加し、pH5.7ではMr2万,pH7ではMr2.4万のタンパク質が出現した。これらの変化はNa【NO_2】で影響されなかったが、【Ca^(2+)】添加でpH7での変化が増幅された。2.遊離アミノ酸の変化:遊離アミノ酸の産生量はpH4と5.7ではごく少なかった。一方、pH7では多く、特にThr,Ser,Asn,Glu,Pro,Gly,Ala,Val,Leu,Lys,Argが増加した。これらの変化はNa【NO_2】と【Ca^(2+)】でほとんど影響されなかった。3.ペプチドの変化:ペプチドの増加量はpH4と5.7での方がpH7でよりやや多かった。特に増加したアミノ酸残基はpH4と5.7ではAsx,Ser,Glx,Ala,Leu,Lysで、pH7ではGlx,Pro,Ala,Lysであった。これらの変化はNa【NO_2】では影響されなかった。一方、【Ca^(2+)】添加ではpH7での増加量のみが約2倍に増えた。このときのペプチドはThr,Ser,Glx,Pro,Gly,Ala,Val,Leu,Lys,Argを多く含んでいた。4.官能テスト:食塩とNa【NO_2】共存下(Na【N_3】含まず)での試料を加熱して得たスープは、pH4よりもpH7で貯蔵した試料のものがおいしいと判定された。5.総括:以上の結果から、pH7での塩漬で中性アミノペプチダーゼによる遊離アミノ酸の産生が惹起され、良好な香味形成が達成されたと推定される。酸性での塩漬ではカテプシン群によるペプチド産生のみが優先的に進行し、これだけでは香味は向上しないといえる。【Ca^(2+)】添加で増幅された中性でのペプチド産生はカルパインの作用に帰属されるが、この現象の香味への効果は今後検討すべきである。
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