Research Abstract |
〈はじめに〉内因性精神病のウィルス仮説を検討するために、感情障害者,精神分裂病者の血清ウィルス抗体価を測定した。〈対象と方法〉帝京大学病院精神科への入院歴があり、RDCの診断基準で感情障害(A)と診断された51名(双極病BP11名,定型・準定型うつ病D31名,その他9名),精神分裂病(S)と診断された27名と、大学生・病院職員(N)181名を対象とした。方法は血清を用い、サイトメガロ(CMV),ヘルペス【I】型(HSV),コクサッキー(COX),アデノ,麻疹ウィルスについてEIA法(IgG),CF法で抗体価を測定した。〈結果〉1.17〜39歳の年令階級での比較:平均年令はN(169名)=25.4歳,A(14名)=28.9歳,S(23名)=28.8歳。各ウィルスに対する抗体陽性率(CF法)は、N=76%,83%,80%,97%,98%,A=86%,93%,57%100%,93%,S=83%,100%,65%,96%,100%であった。アデノ,麻疹ウィルスでは差がみられなかったが、CMV,HSVでは疾患群で値の高い傾向がみられ、HSVではSがNより有意(PL.05)に高く、COXでは逆に疾患群で低く、AがNより有意(PL.05)に低かった。2.BPとDの比較:各ウィルスに対する抗体陽性率(全年令階級:EIA法で0.50以上)はBP=91%,91%,45%,100%,91%,D=97%,100%,45%,100%,97%で差はみられなかった。3.出生季節による抗体価の状況:NのCOXで冬〜春生まれで有意(PL.05)に抗体価が低く、AのHSVで夏〜秋生まれで有意(PL.05)に高かった。4.他の因子:精神科的遺伝負因,肝障害の有無による抗体保有率は、A,Sともに差がなかった。〈まとめ〉精神疾患患者でウィルス抗体の保有に対照よりの偏りがみられ、ウィルスの免疫学的関与が考えられるが、疾患,ウィルスにより状況が異なっており、疾患,ウィルスごとにさらに詳しい検討が必要と思われる。
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