Research Abstract |
ブラッシングは,プラークの除去効果が最も高く,日常の臨床に広く用いられているが、それにともなう副作用もしばしば観察される。特に,歯肉退縮とそれにともなう楔状欠損はブラッシングの方法と圧,歯ブラシの毛の材質や硬さ,歯磨剤などが複雑に作用して生じると考えられている。 今回我々は,本研究室で開発したブラッシング圧測定装置を用いて,楔状欠損を有する患者の問診とブラッシング圧を測定し,対照側と比較検討した。被験者は鶴見大学歯学部附属病院に来院した患者で,楔状欠損を有し,過去にブラッシング指導を受けたことがない6人(37才〜57才,平均51才,男性1人,女性5人)を用いた。測定部位は上顎において楔状欠損が最も著しい部位とし、被験者が日常使用している歯ブラシ(豚毛3人,ナイロン毛3人)とブラッシング法(横みがき法2人,横と縦みがき法3人,ローリング法1人)で行った時のブラッシング圧を測定した。 その結果,被験者6人のブラッシング圧の平均は423.6g/【cm^2】であった。対照として健全歯列を有する医局員12人を用いて,豚毛とナイロン毛歯ブラシを使用し上顎右側臼歯部のグラッシングを測定した。その結果,平均は321.8g/【cm^2】であり,被験者側の圧の方が高い傾向を示した。豚毛とナイロン毛を分けて比較すると,豚毛では,被験者側で530・8g/【cm^2】,対照側で381.2g/【cm^2】,ナイロン毛では,被験者側で316.3g/【cm^2】対照側で262.4g/【cm^2】であり,両者とも被験者側で高い値であった。また,ナイロン毛より豚毛の方がブラッシング圧は高く被験者6人のうち3人が豚毛歯ブラシを使用し,比較的多量の歯磨剤を使用していたことは楔状欠損の原因を考える上で興味深い結果であった。 今後,症例数を増し,楔状欠損の程度,測定部位,ブラッシング方法,歯ブラシの材質および歯磨剤などを考慮し,詳細に検討していく予定である。
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