Research Abstract |
本年度は主に深在性腫瘍を対象に加温療法を行ない, その効果を検討した. 開発した8MHz RF誘電加温装置を用い, 深部腫瘍60例に計307回の加温を行なった. その結果, 43℃以上加温出来た腫瘍は38%,41ー43℃が40%,41℃以下が22%であった. 腫瘍の部位別では, 頭頸部,胸部,四肢,骨盤部の加温が比較的容易であったが, 上腹部,特に肝,膵臓胃腫瘍の加温が困難で43℃以上に加温出来たのは約20%にとどまった. 誘電加温の問題点は脂肪が, 加熱しやすいことで, 脂肪の厚さが2cmを超えると43℃以上加温出来たのは17%であった. 加温療法による治癒過程で特徴的なのは, 腫瘍が消失して治癒するものと, 腫瘍容積に大きな変化はないが, 腫瘍が壊死化し, CT所見上この部が低吸収域を呈するタイプがあることがある. 低吸収域が腫瘍に占める割合を80ー100%のものをgrade3,50ー80%をgrade2,50%以下をgrade1とすると, grade3を示した例は腫瘍内最低温度が42℃以上の場合のみであった. 一方, 腫瘍の縮小と腫瘍内温度との間には直接関係を認めず, また腫瘍の再発率は腫瘍容積より, 腫瘍内低吸収域の程度と相関することが明らかになった. このことから, 加温療法の効果判定にはCT所見上の低吸収域が重要な意味を持つことが示された. 次に, 加温療法により長期生存率が改善されることが食道癌で始めて明らかにされた. すなわち, 食道癌の従来の手術による5生存率は約20%であったが, 加温+抗癌剤+手術により約46%に改善された. また, 骨盤部,軟部組織,頭頸部の各腫瘍は加温療法により, 長期生存率の改善の可能性が示されたが, 脳腫瘍,上腹部の腫瘍については, 現段階では症状の寛解効果しか得られていない. その主なる原因は深部加温装置が未だ成熟した段階に達していないためと考えられ, 加温装置の改善と非侵襲的温度側定技術の開発が進行中である.
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