Research Abstract |
(1)大腸腺腫や癌に出現するバネート細胞は, 小腸のものと同様にリゾチーム陽性であるが, 弱好酸性, 異染性等の点で単なる小腸腺化生ではなく, 腫瘍性性格を有するものと考えられた. (2)粘液組成, 抗原性, レクチン反応性の点で, 大腸腺腫は大腸癌と非常によく似た形質異常を示したが, 非担癌正常粘膜と担癌大腸の背景粘膜の性状を比較すると, N-acetylneuraminic acidの含有率では差がみられなかった. (3)肉眼形態が平坦で, しばしば中心陥凹をともなう大腸の小扁平降起病変の中に腺腫(flat adenoma)が存在し, その癌化率は22.7%と高率であった. (4)放射線大腸炎の癌発生率は対照群の約20倍と高率で, 背景粘膜の粘液にPPKP染色で異常なblue cryptが高頻度に認められた. (5)DNAパターンをみると, 正常, 腺腫ではdiploidで, dysplasia,早期癌ではpolyploid,進行癌ではaneuploid,mosaic patternが優勢であった. (6)Ex vivo autoradiographyで, 腺腫の増大にともない, 区画形成性の標識細胞分布が認められたが, cancer in adenomaの腺腫では一様な標識がみられ, progressionによる癌化が示唆された. (7)大腸癌組織から分離したUEA-1結合性H抗原は, 分子量約20万と推定され, そのreceptorは分子量3,800のアスパラギン結合型糖鎖であると推定された, (8)大腸癌に対する4種類のモノクローナル抗体のうち3種類がCEA分子の特異な3次元構造を認識していた. また, 点突然変異を有する癌遺伝子産物p21をウエスタンブロット法で区別しうる抗体(NCC-RAS-004)が作製できた. (9)DMH誘発マウス大腸癌ではPgk-1 typeでaxa,bxb,axbの3群間での腫瘍発生頻度に差異はなく, この遺伝子座は大腸腫瘍発生に影響を与えないと考えられた. (10)Histo-in situ hybridizationでは, 大腸癌39例中16例にmyc,11例にras遺伝子の転写活性亢進が確認された. (11)NIH/3T3トランスフェクション法では, 日本人大腸癌でKi-ras,N-ras,hst,retの活性化が認められた.
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