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¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 1987: ¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
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Research Abstract |
幹細胞の分化決定への制御機構を細胞遺伝学的に解明するために, マウステラトカルシノーマ細胞株F9より, 細胞増殖に関する温度感受性変異株を分離した. 従来よりF9幹細胞の自己増殖と細胞分化は, 相反する関係を示す結果が得られており, 我々が分離した数十株の温度感受性変異株の中にも, 許容温度(32.5℃)では未分化状態を保ち, 非許容温度(39℃)では分化形質の発現が認められるものが存在した. 即ち, 39℃で培養する事により, 細胞形態が分化型に変化し, プラスミノーゲン・アクチベーターの産製, SSEAー1抗原の消失, 基質非依存性増殖能の消失等分化形質の変化が認められた. 又, 分化の指標となるラミニンやサイトケラチンのメツセンジャーRNAの増加も認められ, 内胚葉様細胞に向う分化が確認された. この時, 細胞増殖と密接な関係なもつと考えられるがん遺伝子のcーmyc及びkーrasのメッセンジャーRNA量は, 細胞分化と共に減少した. 以上のように, 得られた温度感受性童異株は, 許容温度では未分化状態で自己増殖を行い, 非許容温度で培養する事により, 内胚葉様細胞に分化が誘導される事が分ったが, この時, 細胞増殖はS期で阻害されている事が明らかとなった. 従って, これらの温度感受性変異は, 幹細胞の増殖から分化への切り換えの制御機構に関係した遺伝子に生じたものであり, しかもDNA合成期の進行とも密接に関連したものである事が示唆された.
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