Research Abstract |
核酸アナログ, 抗生物質, ビタミン, 多糖類などの広範な薬剤から抗HIV活性を持つものをスクリーニングした. MTー4細胞を標的細胞とした, セルフリー感染系およびMOLTー4細胞とMOLTー4/HIV細胞との混合培養による細胞間感染系で, その効果を検討し, 次の結果を得た, 種々の硫酸多糖体(デキストラン硫酸, ヘパリン等)に強力な抗HIV効果のあることがわかった. これらの物質は, セルフリー感染のみならず細胞間感染も抑制した. また硫酸多糖体は, AMVやHIVの逆転写酵素を阻害した. これらのことにより, その作用機序は, HIVの標的細胞への吸着阻害と逆転写酵素阻害であろうと思われた. これまでよく研究されているアジドチミジンやジデオキシヌクレオシドなどは, 逆転写酵素の阻害を介してセルフリーHIV感染を抑制するが, 混合培養による多核巨細胞の形成は抑制しないことが判った. 試験内で観察される巨細胞形成は, 実際に脳などのバイオプシー標本でも存在することからHIVの生体内での感染拡大, T4細胞破壊とも深く関係していると思われる. 従って, セルフリー, 細胞間感染の両者を抑制する硫酸多糖本の抗HIV作用は, エイズの治療薬開発の上で重要な知見と思われる. 我々は, 硫酸多糖体の上記二作用と硫酸基の関係に着目し, 種々の多糖体や非多糖体を硫酸化し, その抗HIV活性を検討した. そのようにして作製したレンチナン, リボフラナン, カードラン, グリチルリチンなどの硫酸化物は, もとの物質ではみられなかった逆転写酵素阻害活性やHIVの吸着阻止作用を示した. セルフリー感染でも, これらの物質は10μg/mlレベルで完全にHIVの増殖を阻止した. 現在, 種々の免疫調節作用, 抗腫瘍作用, 抗ウイルス作用などを持つ物質に同様のアプローチを加え, 新しい抗HIV物質の開発をすすめている.
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