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¥4,000,000 (Direct Cost: ¥4,000,000)
Fiscal Year 1987: ¥4,000,000 (Direct Cost: ¥4,000,000)
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Research Abstract |
Nーmyc癌遺伝子の機能の解明と永久増殖能に対する作用機構の解明を目的として研究し, 次の結果を得た. 1.神経芽細胞腫でNーmyc遺伝子の増幅を10例, また構造異常を2例見出し解析した. 2.ある患者の横紋筋肉腫の転移例について, 遺伝子増幅は各臓器の転移腫瘍においてほぼ同程度であったが, 本来のプロモーター部位との置換によるDNAの再配列は原発巣に限ってみられ, このDNA再配列は腫瘍化と無関係であると結論した. 3.ノーザンハイブリダイセイションの方法に改良を加えて検出感度を上げ, 株化された各種の胎児性腫瘍のNーmycのmRNAを解析した. 神経芽細胞腫では増幅の程度にほぼ比例した量の発現を認めた. 増幅Nーmycを持つ横紋筋肉腫から樹立した細胞株では中程度の発現を認めた. ウイルムス腫瘍では遺伝子増幅はなかったが発現を検出し, その量は遺伝子増幅のない神経芽細胞腫よりむしろ多かった. その他の多くの腫瘍における発現は検出限界以下であった. 総RNAを解析した場合に検出される, 正規のmRNA以外の多数のバンドについて, RNAの強固な高次構造・部分的な転写・アンチセンス鎖の転写の可能性を検討した. 4.NーmycのmRNAはcーmycと同様不安定であった. cーmycに似た発現調節機構が考えられる. 5.サイズを異にするmRNAを転写するウイルムス腫瘍の1株を見出した. 対応するDNAの分子クローン化を進めた. 6.正常ヒトのDNAライブラリーからNーmyc遺伝子の周辺約数十kbを分子クローン化し構造を解析した. それらをプローブとして腫瘍のDNAの変化を検索し, またDNA多型を検索した. 7.培養細胞を使用して, 人工的に遺伝子増幅を引き起こす実験系の開発に着手した. 以上のように, 臨床材料の解析からいくつかの新しい知見を得ることができ, 一方培養細胞を使用して転写産物を解析し, 組織特異性や安定性など基本的性質を明らかにできた.
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