Research Abstract |
本研究では, データの蓄積が進んでいる大気汚染データの中で, 時間的・空間的な変動特性が複雑な二酸化窒素を主な対象として, 変動特性の把握, 環境統計としての体系的な整備, 及びその活用について検討した. とくに変動特性の把握を本研究の中心課題として, 簡易濃度測定器を用いた高密度測定という, これまでに例のない体系的な調査を行った. 調査は領域及び季節を変えて, 前年度までに4回行い, それぞれ簡易測定法を用いて各地点の1日平均値を数日間にわたって測定した. 本年度は, 第3, 4期の測定データの統計解析を行い, 第1, 2期データとの比較を行った. 第1, 2期の結果と比較すると, (1)簡易測定器の精度(1-2ppb弱), (2)日効果, 地点効果, 相互作用の間の関係に安定した地域濃度パターンが存在すること, (3)風向と空間パターンの関係等については, 同様の結果が再確認された. しかし, 定量的には, 相互作用の大きさが第1, 2きに比べて大きく, また第3期の平均濃度が第4期に比べて高いにもかかわらず, 相互作用は第4期の方が大きいなど, 不安定な要素もみられた. これらをより詳細に検討するために, 本年度はこれまでとほぼ同一の地点において, 簡易測定法を用いた補完的な調査を行った. また大気汚染濃度の時空間変動を踏まえた観測局の地域代表性の問題にたいして, (1)交互作用のパターンが類似した地点を統計的な判断を基に同定する方法, (2)一般化された空間相関関数を用いた統計的な最適内捜法(クリジング法)の適用を検討した. さらに, 大気汚染の重回帰モデルによる予測において, 空間的な変動が重要であるとの認識から, モデルの空間的安定性を検討すると共に, 空間遅れの概念を取り入れた時系列モデルを開発した.
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