Research Abstract |
オショロコマは, サケ科イワナ属に属し, 我国を含め, 北方園に広く分布する魚種で最も寒冷地に適応した原始的魚種とされている. 変異の中が広く, 生活環には相分化がみられ, 河川残留型と降海型の2型に分かれる. 我国では, 河川残留型が, 一般的であるが, アラスカでは, 降海型が多く, この相分化の遺伝的な維持機構が問題となっている. 本研究では, アラスカのオショロコマについて繁殖生物学的な解析を目的として調査を行い, 降海型と残留型の繁殖の関与, 繁殖行動の解析, 地方集団の遺伝的解析, アイリザイム多型を調べ, 我国のオショロコマと比較検討を行うことを目的とする. 本調査は, アラスカ州におけるサケ科魚類の繁殖時期に合わせて, 8月〜10月の期間に行った. この間, ジュノー市近郊では, 5河川, ケチカン市近郊では2河川, アナトヴィク近在のチャンドラ湖, コディアック島2河川, アンカレッヂ市近郊のチーケル川/河川を中心に採集を行った. 筋肉資料は電気泳動によってアイソザイムの解析を行った. その結果, Ldh,LL,Aat,Pgm,Lgg,6Pg,Gpi,Me,Aco,Agp,Sdhの各酵素蛋白に電気泳動的に分離される多型が観察された. この多型を利用した集団の解析が可能となり, 河川間で明瞭な差のあることが明らかとなった. また, コデアック島のカーラック川には外観上区別できる2型が同所的に生息し, この2型は筋肉のPgiー1と2および肝臓のAatー1に明らかな置換がみられ, 生殖的に隔離された別集団であることが確認された. この集団は, 過去の文献と照合し, 北極イワナとオショロコマに相当するものと判断され, 同島に2種類存在することが明らかにされた. 繁殖行動の観察は主にチーケル川で行った. 幅1ー3mの支流のうち約200mを調査域とし, 河川内に産卵のために遡上してきた個体をできるだけ捕獲し, リボンタッグで個体識別を行った. 詳しい行動の解析には8mmビデオを利用し, 13例の繁殖行動を録画した. 産卵場における性比は雄に大きく偏っており, (7:3),両性間の成熟年令の違いが性比の偏に関与すると推察された. 雄の繁殖戦術には雄とPairを組む方法と, satelliteとしてPairの周りに位置し, 産卵の瞬間に忍び込んで放精する方法(Streaking)の2つがあり, 前者は確実に放精できた(97%)のに対して後者はPairとの距離・位置関係などから成功率に差異がみられ, その平均は47%であった. オショロコマには, 陸封型と降海型があり, 両型のグアニン量に関連するプリヌクレシドフォスフオリラーゼ量およびカロチノイド色素量を測定し, その動態を解析中である. アラスカ産淡水魚の種類と分布についても併せて調査し, 魚種の生存が極端に制限されている事実が確認された.
|