Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JORGE Streli アルゼンチン国立極地研究所, 助手
DARIO Trombo アルゼンチン雪氷研究所, 助手
AUTURO E.Cor アルゼンチン雪氷学研究所, 教授
森脇 喜一 国立極地研究所, 助手 (50033501)
小泉 武栄 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (30114812)
小元 久仁夫 日本大学, 文理学部, 助教授 (10004392)
野上 道男 東京都立大学, 理学部, 教授 (50087144)
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Research Abstract |
第四紀後半の地球規模での気候変動で, 南北両極地域では氷床が拡大分布した. このため, 海面の低下による陸地の拡大と, かつての海底面の永久凍土化が生じる. ところが, 後氷期(1月年前)になって, 氷床の縮小に伴う海面の上昇があり, 永久凍土地域は海面下となって部分融解が生じた. そしてアイソスタティックな地殻の上昇で再び海面上にあらわれて永久凍土の再凍結がはじまった. この過程で凍土中の氷の析出があり, 「ピンゴ」地形が形成発達した. したがって, この「ピンゴ」地形の形成史を知れば, 氷床の消長と海面の変動が読み取れることになる. そこで本研究では, 従来研究がほとんどなされていなかった, 南極半島部マランビオ島での永久凍土調査を行い, 地形学的・地球物理学的手法で, 「ピンゴ」の形成過程を明らかにする. (1)地震探査と大地電気抵抗探査を行い, 調査地域での永久凍土の分布を推定した. その結果, 永久凍土下限は約200m深であり, 夏季融解層(活動層)は120cmであることが, 初めて確認された. これは南極地域で初めての永久凍土に関する情報である. (2)永久凍土地域で凍土のボーリング調査を行い, 活動層下に大規模なツンドラ構造土の存在することを確認した. さらに, 長さ200cmを超える氷楔が形成されているのを, 凍土の掘削調査によって確認した. 南北両極の永久凍土地域で, このような大規模な凍土の掘削調査は前例がなかった. アルゼンチン極地研究所のスタッフの協力と機材提供によって今回の現地調査が初めて実現し, 氷楔の存在を確認することができた. (3)ツンドラ構造土分布地域で, 合計26本の凍土中ボーリングを行い, 凍土中の温度分布, 構成物質, 氷の存在量を定量的に把握することができた. その結果, シルト〜粘土凍土のみならず, 第三紀系泥岩中にもアイスレンズと氷体(アイスコアー)が分布することが確認された. 次回の再調査のために, このボーリング孔内に温度センサーを埋設し, 特殊メモリーICによる長期(2ケ年)の温度記録計を設置した. また化学分析用に氷を採取し, 日本に持ち帰った. 現在分析中であるが, 多量の塩類を含むことが判明した. (4)今回の調査地域周辺での永久凍土分布を, 小型航空機によって調査した. 特に赤外線温度センサーによる空中からの地表面温度分布を測定し, 次期調査のための最適地を選定した. その結果, 南極半島部King Goerge島とJames Ross島が最適地であることが確認された. 併せて特殊カメラ(空中写真用)で調査予定地を空撮した. (5)永楔と並んで永久凍土地域に形成される地形(ピンゴ)は, 中心のアイスコアーの存在を確認出来なかった. 次期調査では, より強力な地震探査を行う予定である.
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