Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HECTOR Espin クスコ大学, 人類学部, 助手
JORGE Flores クスコ大学, 人類学部, 教授
LUIS Millone サンマルコス大学, 人類学部, 教授
原 毅彦 独協大学, 教養部, 講師(非常勤) (20218621)
木村 秀雄 亜細亜大学, 経済学部, 助教授 (10153206)
藤井 龍彦 国立民族学博物館, 第4研究部, 助教授 (80045260)
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Research Abstract |
申請者等は, 昭和58以来中央アンデスの人間と環境をテーマとして, 南部高地のケチュア, アイマラ社会(いわゆるインディオ社会)に焦点をあてて, 中央アンデスの文化伝統・社会の基本構造を明らかにすることにつとめてきた. しかし, 北部高地では原住民の文化要素の多くが失われ, 外来のスペイン植民地期の文化要素が卓越する混合社会(いわゆるメスティソ社会)が成立している. 中央アンデス全体を民族学的見地からの地域研究の対象とした場合, このメスティソ社会を研究の視野に取り込む必要がある. 本研究は, 従来南部で行なってきた調査・研究を踏まえ, かつ同一の視点と方法にもとづいて, 両地域を統一的に通解することを目的としている. 1985年度中央アンデス南部の調査成果との比較に留意すれば, 特に次の点が指摘できる. (1)北部高地の定期市:各地で盛んに行なわれている定期市では, 物々交換がほとんど行なわれず, 現金取引である. 市は農村の産物を海岸の人口集中地へ供給する機構の一部として機能し, 農民も市を余剰産物を売却し, 生活必需品を入手するための, 経済的制度としてのみ利用する. 前回調査の南部高地と比較した場合, 村落社会の共同体規制が弱く, 農民の貨幣市場経済への統合, およびそれに適応した価値観, 行動様式が顕著である. (2)南部高地農民社会:農牧民社会においては, 男女の分業が明確である. 男性は主として農業, 女性は牧畜に従事する. この分業は土地および家畜の相続にも関係があり, 男性には土地, 女性には家畜を多く与える傾向が顕著である. 農業と牧畜, 男と女の関係は相互に補完的であるが, 同時に対立的問題点を含んでいる. (3)山地農民の都市移住:都市リマのここ20年の急激な人口増加は山地住民の移住によるが, 北部高地からの移住は動機・過程・適応の局面での個人性, 独立制が強く, いッぽう南部高地からの移住者には集団制, 相互依存性が顕著である. この差異は, 北部・南部の母社会の構造に基づく. (4)南部高地都市の呪術治療:山岳都市における周辺農村地帯からの移住も顕著であるが, その過程は海岸の首都リマへの移住とは異なっている. 呪術治療の盛行は都市移住の現象と密接な関連があり, 山岳都市住民のかかえる社会・経済上の諸問題に対する"最後の救済"として機能している. (5)北部高地都市の呪術治療:北部で盛んな呪術治療師の活動の中には, 地域差はあるものの, カトリシズムと固有の民間信仰の両者の混在が認められ, また, 彼らに治療を依頼する人々も, 単に農民のみならず教師, 大学生, 都市の知識層も含まれる. 南部の呪術治療との比較では, 多くの類似を認めると同時に, 伝統的呪術・宗教の差異も反映している.
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