Research Abstract |
生涯学習の時代といわれる今日, 科学系博物館の教育活動は, 個人のもつ可能性・能力を引出し, 新しい発見と創造へと導くとともに, その主体的・自発的な活動を助長するうえで極めて重要である. このような観点にたって, 最近, 我が国の科学系博物館では, 新しい科学活動の推進に努めているが, 我が国ではその歴史が浅く参考とすべき十分な資料がない. そこで, 今後積極的に欧米の博物館に学び, より効果的な科学教育活動のあり方を開発する必要がある. 本調査研究は, 世界の自然史系博物館の中でも学術研究機関として長い伝統を有し, かつ発展期にあるヨーロッパ各地の自然史系博物館を, 特に科学教育の観点から調査研究し, 我が国における自然史系博物館の学術的研究及びその教育活動の発展に資することを目的とした. 調査研究の目的に従って, 調査研究の内容にリストした諸博物館を調査し, 印刷物, 教材等の資料の収集を行い, 設備の観察, 撮影, 関係者らとの討論を行って記録を作成した. その概要を以下に述べると, 最近5年間における欧州における自然史系博物館の発展と充実はめざましいものであった. ベルギー王立自然史博物館は隣接の旧修道院を改修して大幅に展示面積を拡大し, 旧職員等のボランティアによる教育活動を展開しつつあった. フランクフルトにある西ドイツ最大の自然史博物館は1817年の創立であるが, 最近の傾向として, 研究者が基礎研究に加えて公害調査, 環境保全への協力, モロッコにおける博物館建設への協力等の活動を行っていた. 友の会活動も盛んでそのメンバーは5,000人にのばる. 今後8年をかけて展示, 建物の内装を新しくする計画あった. 同じ西ドイツのシュツットガルト州立博物館は創立1791年であるが, 一昨年新して建物を完成し, 展示, 研究設備, 標本収蔵において斬新的な内容とデザインを実施していた. 学校からの団体は, 市が給料を支払う6名の教師が自宅待機しており, 博物館からの連絡により説明や指導を行っていた. フランスのパリにある国立自然史博物館は, 一昨年植物園の下に地下三階の頑丈な収蔵庫を完成した. ブラジル産の水晶の一大コレクションを購入し, 特別展を次々と計画し, 展示も音響や照明の効果も用いて21世紀の博物館をめざして大きな国家予算を投入する計画であることが判明した. 年間20の海外学術調査隊を派遺し, 概観するに欧州の博物館は過去において基礎的研究と標本の永久保存の機能を中心として発展し, 展示活動も行われてきたが, ボランティアを含む教育活動, 特別展を含む普及活動等の新して動きが現在急速に高まりつつある. このような意味で, 今後の我が国の独自の自然史博物館将来像の構築に関連し, 交流を深め, 情報交換を円滑にし, 活性化させ, 将来計画の基礎資料を蓄積する努力を重ねることは重要である.
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