Research Abstract |
デカン高原北部からタール砂漠にいたる中央インドの「干ばつ常習地域」を対象にして, その農法体系や農村構造を自然環境要素と関連づけて生態地理学的に解明する. 特に, 干ばつの発生の実態と1970年以降の開発諸政策の成果を検討し, 今日の国際的な干ばつ問題の克服に資する. 従来, 地誌研究の空白地帯であった中央インドを, 南・北インドの「漸移地帯」の視点から精査し, 全インド地誌を完成させることを最終の目的とする. なお, インド農村を長期的・計画的に研究する場として「観測定点」を構想し, サンプル調査村をそれに組み入れる. 1987年7月14日より10月6日まで, 主としてインド西部ラージャスタン州において現地調査を実施した. 当初計画では二つのサンプル調査村において研究する予定であったが, 3年連きの大干ばつにより, 滞在調査は同州東部のみに制限されたためサンプル調査はジャイプール県アバネリ村のみとした. 但し, 同州西部についても州政府への数回の交渉の結果, 広域的調査が許可されたので9月下旬, これを実施した. サンプル調査村入村前に, デリー及びジャイプールにおいて中央並びに州政府の関係諸機関, 大学・研究所等で研究課題に関する討議及び資料収集を行った. サンプル調査村では, 全世帯を対象とした面接調査, 集落・地籍図作成をはじめ, 農業経営, 家畜, 人口移動等の社会経済調査及び地形, 地下水, 土壌等の自然環境調査を実施し, 干ばつ多発地域の農業・農村構造の解明に資する多くの資料を得ることができた. また, サンプル調査村と関係の深い中心町において労働力, 商品流通等の調査を行い, 都市ー農村関係や, DPAPやIRDP等の農村開発の政策効果についても研究した. サンプル調査村ではインド側研究分担者をはじめ, 政府統計局調査員, JNU, RU両大学大学院生が調査協力者として参加し, 一時は総勢20名の大世帯となった. 宿舎, 食事, 輸送等の困難もあったが, 幸い地元住民や役人の協力を得て計画通りの調査を行い得た. 1987年のモンスーン期降雨は, "今世紀最悪"と言われ, インド北西部は未曽有の大干ばつに見舞われた. ラージャースタン西部の広域調査では, 当初計画の調査村カリジャルをも訪ねることができ, 干ばつ被害の3段階(作物ー家畜ー人間)を実見でき, また, インディラ・ガンディー運河に関する調査も行った. 干ばつのため, 現地調査にはかなり制約を受けたが, 反面, 研究課題のためには, またとない観察の機会と貴重な資料を得ることができた.
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