Research Abstract |
日本・インドネシア両国間の学問的レヴェルでの文化交流が, 両国の研究者によって長期的に推進されなければならないということは, 両国学界の長らくの懸念事項であった. しかし過去において, 日本・インドネシア両国間でこのような形式での共同研究はおこなわれたことがなく, 新しい研究方法について両国間で十分な認識と理解を深めることが必要である. しかし, 我が国には研究計画立案のためのインドネシア側の情報や資料が欠乏しているため, 実際に現地におもむき, 研究者と面接し, 大学や研究機関と接触して研究態勢とその実態及び動向を把握することが不可欠である. このような予備的調査の結果に基づいて, インドネシア側との共同研究の可能性とその遂行の方法を探るとともに, インドネシア側にも計画の趣旨を説明し, 理解と協力を求めることが, この調査研究の目的である. 日本・インドネシア間の望ましい学術的文化交流の方法とその可能性を探るべく, 日本から3名とインドネシアからも3名がそれぞれ相手国を訪問して, 幾人かの研究者と議論を重ね, また大学, 研究所, 各種の施設を視察して今後の共同研究のための理解と認識を深めあった. ことにインドネシアでは, 従来の他国による学術調査のあり方にたいする批伴が噴出しつつあるおりから, 昭和63年度から計画している海外学術研究の「共同研究」による方式に大きな関心と期待が寄せられた. 来日した3名は, この3名がインドネシアにおいて, 今後, 共同研究を円滑に遂行するため各種の問題に対処するための委員会を結成したいと提案したため, 日本側もそれに対応するべく崎山,前田のほか関本照夫(東京大学東洋文化研究所助教授)が委員会を構成することで同意し, 合意文書に署名しあった. (添付文書参照)この合意文書は, 3名が帰国後, インドネシアにおいてより高いレヴェルでの代表者が両国間の共同研究のための協定締結を推進すめための基礎として活用される. また63年度の研究開始直前に, 日本から代表者がインドネシアにおもむきこの協定書に調印する予定である. インドネシア研究者による日本文化研究は, ようやくその兆しがみえてきたところであるが, 日本文化にたいする関心はそうとうの高まりをみせつつある. 今後, 少なくとも3年間にわたる共同研究の通年の研究課題として, むしろ柔軟に運用しうるような「日本・インドネシア文化の伝統:その変容と継続」とすること, そして63年度には「口頭伝承における構造と機能の比較研究」とすることが, 両国の話し合いで合意された. その方法として, 長期・短期を含め, 日本からは研究者若干名がインドネシアにおもむいてゼミナールや共同研究会に参加し, インドネシアからも研究者若干名を日本に招聘して学問的な交流を深めることで意見の一致を見た.
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