Research Abstract |
制がん活性物質を天然資源から得ることを目的に, 海外調査活動を行っているが, 生薬 の約80%は植物由来である. 南米は, 東亜圏と全ん異なる植物相を有し, また有用植物の多くが, そこに起源を発すると言われている. そこで, 過去2年に亘って植物の豊富なアマゾン河を中心に薬用資源の調査を行ってきた. 今回は主に, ペルーを中心に, ペルーアマゾン流域およびアンデス高地における植物および民間医薬の収集,調査に努めた. 入手した資料については, 制がん活性スクリーニングを行い, 有用な活性物質を探索するのが目的であり, 現在進行中である. 当研究室の方針としては, まず第一に現地における資料の収集があるが, 持ち帰った検定資料について, 抗腫瘍活性スクリーニングを行い, さらに活性物質の単離・構造決定となると, 必ずしも当該年年度に結果が出るとは限らない. 化学的検討に関しては, 1〜2年のずれが生ずるのは, 止むをえないものと思っている. 本年度は, ペルーを中心にパラグァイ,ブラジル,アルゼンチンで調査活動を行い, 約600種にのぼる検定資料を収集した. これらの資料について現在,活性スクリーニングを続行しており, 徐々に結果が出始めている(表1,2). また, 活性物質の探索という点では, パラグァイ産のイイギリ科の植物Casearia sylvestrisよりin vitroでVー79培養細胞に, また, in vivoでSarcoma180腹水型腫瘍に強い活性を示す一連のジテルペン系化合物を単離することができた(図2). これらの化合物は, 構造的にも新規物質であり, また強い抗腫瘍活性を有するので, 興味ある知見と思われる. 今後, さらに別系統の腫瘍について検討し, それらの活性を確めたいと思っている. その後, 抗腫瘍活性は弱かったが, ブラジル産のショウガ科植物のHedychium coronariumより, 種々のジテルペン系化合物を単離し, 構造決定を行った(図1). 本系統の化合物の中には, 抗菌性テストに, かなり強い活性を示すものが得られている. ジテルペン系化合物の中には, すでに発癌プロモーターとして有名なフォルボール系化合物もあり, 今後, さらに種々の活性を有する化合物が得られる可能性を秘めている.
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