Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 1987: ¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
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Research Abstract |
現在のインドネシアにおける二つの移住形態,すなわち,政府主導による計画的な移住開拓とそれに依らない自発的移住開拓に見られる対照的な結果を踏まえつつ,この移住開拓の主役となってきたジャワ人とブギス人の両者の間の文化的相違に起因する移住開拓に見られる思考・行動様式の対照性を明らかにすることを主眼としている. 具体的には, この二つの民族がスマトラ南部においてどのような生活世界を切り拓いているかについて集落形成, 社会構成, 隣接諸族との共棲関係・エスニシティ, そして農耕技術における自然適応など多角的視点から調査分析することを目的としている. 多数の移民を出しているジャワの代表的な地域としてヨクヤカルタ特別区グヌン・キドゥル県トゥプス郡を選び,現地調査を行った. その結果,移住開拓を引き起こす最大の要因が慢性的水不足と過剰な人口にあることが明らかになった. 南部スラウェシの場合,比較的環境条件の劣るワジョ県北部やボネ県中部からジャンビ,リアウ,南スマトラの諸州への移住が多いことが判明した. 南スマトラ州のアイル・サレー地区のジャワ人には言語や娯楽にエスニシティの保持が見られるものの,宿命感や権威主義が影をひそめたり,考え方が合理主義的になっているなど文化に新たな見られた. 彼らは必ずしも故郷回帰を考えていない. 他方,この地域のブギス人は自発的開拓民であったが,政府主導による開拓が始まるに伴い,それに参加するものと参加しないものに分かれ,土地係争が生じ,かつ,経済的格差も見られるようになっている. 政府による開拓へのブギス人の参加は注目すべきである. パレンジンからタンジュンカランに至る諸地域は古いジャワ人の入植地が多く,成功しているといっていい. とくに南部では「ジャワ化(Javanisasi)」という言語が使われ, 農業技術等にジャワ人の現地人への影響が甚大であった. また,階層分化が発生し,ジャワ的思考様式が支配的であるのはアイル・サレーと対照的である. ジャンビ州のスンガイ・ロカン地区の主要な民族はブギスで潮汐水田やコプラ栽培を行い, 経済的に成功している者が多い. 中にはジャンビの町に賃貸住宅を所有するなどして都市に進出, 商業を営む者もある. 農業志向のジャワ人と異ったブギス人の一面を見た. タンキ・バル地区では土地に合った適切な農業の模索の歴史, 成金的階層分化, ジャワ人とブギス人の共棲に関する点が注目される.
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