Research Abstract |
中国の文化は,宗教あるいは思想の観点からみた場合, 儒教,仏教,道教の三者が複雑に関係しあって形成されたものである. 近年,道教寺院の内部という制限つきながら, 道教信仰が復活し,祭祀, 礼拝が行なわれ, 道士が養成され, 教団組織が整えられ, 経典や建築物の設備が充実してきている. この状況をふまえ,かつ,儒仏二教に比べて研究がおくれている道教について,その歴史と実状を明らかにするため,三回の本調査を行なう. 予備調査は, そのため, 本調査のカヴァーする地域の関係者と合い,諸般の打ち合わせを行なうことを目的とする. 今年度は予備調査であったが,所期の目的をほぼ果たすことができた. まず訪問各地域の情況を記す. (1)北京地域. 中国社会科学院世界宗教研究所での打合せ. これは前後二回行ない,本調査において予想される困難を指摘してもらった. 最大の問題は地方主義であると言われたが, その後, この問題は存在しないことが分かった(地方との打合せによって). さらに資料収集の問題や方法論について討議した. これらは, こちらでも十分予想されるものであり, 重ねて協力を依頼しておいた. (2)山東省地域. 予想以上に各地を訪問でき, 主に遺跡の実情を調査した. 大変協力的である. (3)上海地域. 個人的にはすでに何度も訪問しており, 宗教研究所, 上海白雲観ともに大変協力的である. 調査地域, 順序について貴重な助言を得た. (4)杭州地域. ここも大変協力的であり, 本調査の成果を確信できた. (5)南昌地域. 開放直後の龍虎山天師府も訪問でき, 一応の約束を取りつけた. ただ,まだ比較的閉鎖的である. (6)武漢地区. 武漢市の長春観は協力的であるが, 武当山は必ずしも十分協力的ではない. (7)成都地区. 道教とその研究のもっとも盛んな地域であり, 分担者李遠国氏の協力もあって,予想以上に大きな成果があった. (8)西安地域. 棲観, 華山等で打合せをし,十分な成果を得た. 以上, 各地域の研究機関, 道観, 道教協会との打合せを総括すれば,(1)道教信仰復活の規模と深度,(2)道教行順の調査と記録,(3)道観,道教聖地の現状,(4)研究機関の研究状況,などの諸事項について,十分に成果をあげられる見通しを持った. なお,本調査は,(1)西安・成都,(2)江南地域,(3)山東,東北地域の順に行ないたい.
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