Research Abstract |
自然言語理解システムにおいては, 構文情報のみならず, 意味情報や文脈情報, さらには常識を用いることが, 人間並みの能力を持つシステムを構築するには不可欠なある. にもかかわらず, 従来のアプローチでは, これらの諸要素をできるだけ独立に扱い, 相互間は階層的に接続するシステムを目指す方向で研究が進められてきた. しかし, このアプローチでは, 構文解析システム, 意味解析システム, 文脈解析システム, そして常識推論システムの相互間での柔軟な情報の流通が困難である. そこで本研究では, このような欠点を克服するために, 上記の諸システムを統一された知識表現とアーキテクチャで構築することを目指した. 本研究で採用したコネクショニストモデルでは, 情報は記号に対応するノート相互間の結合パターンで表わされ, 情報処理過程は結合パターンを介しての活性度の伝般で統一的に表現される. しかし, 従来はコネクショユストモデルは, 構文解析装置の構造は明らかでなかった. 本年度の研究では, トリガリンクと呼ばれる特別な結合パターンを用いてコネクショユストモデルに基づく構文解析装置の構造を明らかにした. さらにこの構文解析装置のメカニズムによれば, 従来の構文解析装置ではアドホックにしか実現できなかった人間の固有な構文解析パフォーマンスを統一的な原理で説明することができる. これらのパフォーマンスとは, 構造的多義文の読みの偏向現象, 入れ子の深い文の認識の困難, 袋小路文の認識の困難などである. このような多岐にわたる言語現象を, 統一的な枠組みで説明できる理論は, 本研究における提案が始めてである. さらにこの考察により, 意味, 文脈, 常識が, 文の理解過程においてどのように作用しているのかについての理解が深められた. したがって, これらの諸情報を扱うシステムへの糸口が開かれた.
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