Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 1987: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
|
Research Abstract |
熱反応ではえられない特色を有し, 反応機構上の興味ばかりでなく, 有機合成化学的にも充分使用に耐える選択性をもち, しかも収率の高い光反応を開発するための試みの中, 本研究では, 1)トシルエステルの光加水分解反応, 2)低温におけるラジカル環化反応の制御の2つが検討された. 1)電子移動光反応によるトシルエステルの光加水分解とヌクレオシド化学への応用-トシルアミド類はジメトキシナフタレンなどの共存下, 光照射により, 励起状態における電子移動を経て容易に加水分解される. 同様な反応がトシル酸エステルにおいても進行することが今回確かめられた. トシル酸エステルの光反応における電子移動の速度は大変早く, トシルアミド類の5倍もあるが, 光加水分解反応の量子収率はむしろトシルアミドより低く(φlim=0.26), 問題を残している. しかし化学収率は充分高く実用に耐えられるものと思われる. 糖の誘導体, ヌクレオシド誘導体共に高収率で加水分解される. トシル酸エステルはヌクレオシド化学では2′-水酸基の選択的保護基となりうるので, 本法がその新しい脱保護法となりうる. 2)ラジカル環化反応の低温における立体制御の試み-ラジカル環化反応は, 反応条件が比較的緩和でしかもユニークな反応をおこすことから近年特に注目を集めているが, これを熱反応で行う場合, 不安定な化合物など反応収率が著しく低下したり, また環化の際に新たに生じる立体構造の制御もできない. 我々は低温での光照射により生じたラジカル種による環化反応を行ない, 反応収率の増加と立体制御を試みた. 実際, アセチレン体を分子内でカルボニル基に閉環する反応は, 熱反応では低収率であるが, 光反応では殆んど定量的に進行し, とくに例えば-30°Cまで温度を低下させると, 生成するオレフィン体の立体制御も可能であることが明かとなった.
|