Research Abstract |
細胞膜にホルモン, 光等の情報が到達するとイノシトール, 1, 4, 5-トリリン酸(I(1, 4, 5)P_3)が生じて細胞内に情報が伝達されることが発見された. I(1, 4, 5)P_3の最初の合成は前年に我々が行った. 本年に入って, I(1, 4, 5)P_3の代謝産物であるといわれているI(1, 3, 4)P_3, I(2, 4, 5)P_3, I(1, 3, 4, 5)P_4の合成を試みた. これらを合成するために次の3つの項目について研究した. 1.リン酸化法 (1)ブチルリチウムのような強塩基とテトラベンジルピロリン酸を用いてリン酸化する方法が最良であることを見出した. リン酸化後は接触還元によりすべてのベンジル基を除去する. この方法によってI(1, 4, 5)P_3を容易に合成できるようになった. 又2, , 5, 6-トリベンジルミオイノシトールよりI(1, 3, 4)P_32, 6-ベンジルミオイノシトールよりI(1, 3, 4, 5)P_4を合成することができた. (2)水酸基を1つ残してこれに三塩化リン, ベンジルアルコール, t-ブチルハイドロパーオキシドを順次反応させてリン酸化後還元して, I(2, 4, 5)P_3を合成することができた. 2.光学分割法 ミオイノシトールはメソ体であるので天然のIPxの合成にはいづれかの段階で光学分割する必要がある. 1位の水酸基にメントキシアセチル基をつけてジアステレオマーとする方法がすぐれていることがわかった. 又, キラルカラムを用いてジアステレオマーを分離すると2つの不斉部位による認識が行われて極めて分離能力が上がることがわかった. 3.選択的保護法 シクロヘキシリデン, アリル, ベンジル, ベンゾイル, メトキシベンジル, レブロイル基を適所で使い分けした.
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