Research Abstract |
シトレオビリジン類はミトコンドリアでのATPaseを阻害することが判明し, 注目を集めている. 申請者らは, Penicillum citreovirideの産生する生理活性物質を探索し, 新らしくエピシトレオビリジノールを単離した. 化合物が微量にしか単離できなかったため, 400MHzNMRスペクトルを駆使してその構造を推定することが出来たが, 最終的には, 絶対配置をも含めてその立体構造を合成によって確認し, あわせて生理活性試験に多量に供給する道を開いた. すなわち, D-グルコースよりすでに合成しているシトレオビラールから出発し, 順次1)Wittig反応, 2)アセチル化, 3)エポキシ化, 4)酸触媒の閉環反応, 5)DIBAL-Hによる還元, 6)MnO_2酸化, 7)Wittig反応を経て, 目的のエピシトレオビリジノールを合成することに成功した. また, 合成品の旋光度が天然のエピシトレオビリジノールのそれと完全に一致したことにより, エピシトレオビリジノールの絶対配置がシトレオビリジンのそれと同じであることがわかった. 他方, シトレオビリジン型マイコトキシンの一つにアステルトキシンがある. アステルトキシンは2,8-ジオキサビシクロ〔3,3.0〕オクタン環を有し, 生理活性だけでなく構造的にも興味がある. そこで, 申請者らは, その絶対配置を決定するためにも, D-グルコースより出発し, 約20段階を経て上記の2,8-ジオキサ〔3,3.0〕オクタントリオールを光学活性体の型で合成することが出来た. ここに作られた合成品は天然物のオゾン分解ついで還元して得られる誘導体と旋光度を含めてすべてのスペクトルデータが一致した. したがって, アステルトキシンの絶対配置がシトレオビリジンやエビシトレオビリジノールと同一であることがわかった. 現在, アステルトキシンの全合成を行っている.
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