Research Abstract |
本研究は, 金属エノラートが転位末端となるジグマトロピー転位るおける「〔2, 3〕Witting対〔3, 3〕Claisen転位の競争」を通して, 種々の"金属エノラート種"の構造と反応性を推定評価しようとするものである. 昨年度は, 最も基本となる"Li-およびSi-エノラート系"を検討したが, 本年度は, 構造的にやや複雑な"Sn(IIとIV)-, Ti(IV)-およびZr(IV)-エノラート系"について研究を進めた. さらに, キラルな"エノラート種"を転位末端とする不斉〔2, 3〕Wittig転位系の開発を検討し, 以下の成果を得た. 1.まず, トランスメタル化法によって発生させた種々の金属エステルエノラート末端の構造をそれぞれの転位挙動を通して推定した. その結果, 〓-シリル化体からトランスメタン化によって発生させた"Ti(IV)-, Sn(Iv)-, およびSn(II)-エノラート末端"では, いずれも〔2, 3〕転位が進行することからC-メタル構造をとっていると推定した. それに対して, 直接メタル化法によって発生させた"Sn(II)-エノラート末端"では, 〔2, 3〕転位は進行せず"chelatedO-メタル構造"をとると推定した. 一方, Li-エノラートのトランスメタル化によって発生させた"Zr(IV)-エノラール末端"はO-メタル構造をとっても〔2, 3〕転位が進行する例外的ケースであることを明らかにした. 2.9-フェニルメントール由来のキラルLi-エノラートを転位末端とする不斉〔2, 3〕転位を検討し, この転位が, 高いジアステレオ面およびエリトロ選択性を示し, α-ヒドロキシーβ-アルキルカルボン酸誘導体のエリトロ選択的不斉合成法となることを明らかにした. 一方, トランスメタル化法により発生させたTi(IV)-およびSn(IV)-エノラートを末端とする不斉転位は, 低い面選択性しか示さないのに対し, Zr(IV)-エノラートを末端とする不斉転位は, Li-エノラート末端の場合とほぼ同等の高い面およびエリトロ選択性を示すことを明らかにした.
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