Research Abstract |
我々は, これ迄, プロスタグラジン(PG)の合成, 分解酵素, 並びに, 受容体の局在研究を通して, 脳神経系でのPGの作用部位の解析とその部位での作用や作用機構を明かにしてきたが, 細胞内で作られたPGが必ずしも産生細胞の外へ遊離して働くのみであるという根拠はなく, 産生細胞内で働くことも十分に考えられる. その際の作用機構として, 様々な様式が考えられるが, 短時間での作用機構として, 細胞のエネルギー代謝の修飾が考え易いものの1つである. 一方, PGは, 低酸素状態からの回復期, 断頭後, けいれん時などに, 脳の通常のレベルの数10〜100倍にも増加することが知られており, この場合のPGの作用や合目的性についても, 細胞内エネルギー代謝を変化させれば, 説明がつくと考えられる. そこで, PGの脳エネルギー代謝に対する効果を解明するために, [^3H]2-デオキシグルコースを用いて, ソコロフ法により脳局所グルコース利用能(LCGU)に対するPG類の投与効果を検討した. 実験日の一週間前にガイドカニューレを埋め込んだラットを用いて, 側脳室内にPGを微量持続注入(1nモル/分, 55分間)して, LCGUを測定した. PGD_2, PGE_2, PGF_<2α>を投与した例を, それぞれ, 5〜7例づつ取り, LCGUの変化をコントロールと比べたが, 大脳皮質の多くの部位や, 視床の神経核では, どのPGによってもLCGUがコントロールの80%前後に有意に減少し, 視床下部では, 乳頭体で3者のPGによりLCGUが低下するほか, PGD_2のみによって他の多くの神経核でLCGUの低下が見られた. このほか, 中隔海馬核ではPGF_<2α>により, 淡蒼球ではPGE_2により, また, 視床下部後核ではPGE_2・PGF_<2α>によりLCGUの増加が見られた. これ迄に得られたPGの受容体局在と比較すると, ある部分での一致と離反とが見られるが, 総合的にPGの作用部位として解析し, 脳の可塑性における役割を検討したい.
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