Research Abstract |
申請計画通り研究を促進し, 次のような結果を得た. 1.培養血管平滑筋細胞増殖に対し, 四物湯は明らかな抑制効果を来し, その構成生薬である川〓および当帰がこの効果を発現することを示した 2.川〓含有成分とその構成関連化合物を中心に, 構造-活性相関を検討した結果, その増殖抑制効果が得られた. 増殖抑制作用にはかなりの構造選択性が存在することが明らかとなり, 強い効果を示したものは, 川〓成分Senkyunolideおよび川〓, 当帰の共通成分Ligustilideで, それらのID_<50>値はそれぞれ1.6μg/mlおよび1.7μg/mlであった. 3.牛胎児血清は10%で培養平滑筋細胞増殖を培養3日目後から開始したが, 1%では殆んど効果を示さなかった. この条件で, インスリン, エピネフリン, PGE_2, PGF_<2α>を加えると, それぞれ増殖効果を示した. 4.上記各種増殖促進物質の効果は, Senkyunolide, Ligustilideによって強く抑制され, その抑制パターンはすべて非競合的であった. 5.そこで, Butylidenephthalideを用い, 抑制物質の投与時期を検討した結果, 培養開始と同時期, 3日後の投与で増殖曲線を比較すると, 増殖開始時期が, それぞれ, 早まってくることを明らかにした. しかし, 増殖速度には変化がなかった. 6.糖尿病態の血管平滑筋を用いた細胞では, 牛胎児血清による増殖効果が著しく増強した. エピネフリン, PGE_2, PGF_<2α>の効果には影響がなく, 正常細胞の場合とほゞ同様であったが, インスリンの効果は糖尿病態細胞では減少した. 以上の結果から, 次年度の計画は, 糖尿病態におけるインスリン受容体の動態を解明, また, Butylidenephthalideの抑制作用機序を明らかにする予定である.
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