Research Abstract |
本研究は, 血液凝固線溶キニン系の開始因子と, 血小板, 白血球および血管壁構成成分との相互作用を解析することにより, invivoでの血栓形成機構, さらには, 動脈硬化などの血管病変の機構を明らかにすることにある. そのために, 実験動物を用いたinvivoの反応系と, 精製した凝固因子を組み合せたinvtroでの反応系を比較しながら解析しつつある. 昨年度においては, トロンビンの蛍光性やプチド基質と遠心方式自動分析計を組合せ, 血液凝固キニン線溶系プロテアーゼの高感度自動分析法を開発した. 本年度は, 本法を用い, ラットおよびスンクスの血漿の開始反応系をヒトと比較した. スンスク血漿の内因系凝固反応は, エラジン酸やサルファチドによる反応は, ヒトと比べて著るしく遅いが, クオハンによる反応はヒトと変らなかった. スンクス血漿中のプレカリクレイン含量はヒトの13%しかなく, デキストラン硫酸を用いても, 殆んど活性化は見られなかった. 以上の結果から, スンクス血漿の内因系凝固反応は, カオリン以外の物質では極めて起こりにくく, またキニン生成系も低いので, 内因系凝固反応の意義を解析する上で有用な実験動物であると考えられる. 一方, ラット血漿の場合, 凝固反応は極めて早いが, それは, 血漿中のXa様活性によることが明らかになった. ラット血漿よりX因子を精製し, そのモノクローナル抗体を調整したが, ラット血漿中のXa活性は, x因子のモノクローナル抗体より阻害され, 少なくとも, 採取した血漿中には, Xa因子が有意に存在することが明かとなった. このXa因子が, どのような反応系により活性化されたものか, 未だ明らかではないが, ラットの場合, 血球成分あるいは血管壁成分との相互反応によるXa因子が極めて生成されやい状態にあるのではないかと考えられ, ラットを用いた反応系は, これらの相互反応を明らかにする上で, 極めて有用なモデル反応系と考えられる.
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