Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 正治 京都大学, 理学部, 教授 (90025320)
藤 則雄 金沢大学, 教育学部, 教授 (40019394)
富田 克利 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (20041220)
小椋 和子 東京都立大学, 理学部, 助手 (20087117)
石渡 良志 東京都立大学, 理学部, 教授 (90087106)
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Research Abstract |
堆積物コア試料には,堆積した当時の堆積環境の記録が年代を追って保存されているはずである. 所が有機物,無機物を問わず,湖底表面近傍での微生物活動,酸化還元環境の変化による堆積初期での速度の大きい続王作用や堆積層深部での脱水過程や鉱物化過程での速度の遅い続王作用の結果,化学組成あるいは化学物貭という形態での堆積環境の記録の忠実度と時間分解能を失うことになる. この問題は我々が堆積物コアーを分析し堆積環境を再構築する上で考慮しなければいけない重要な問題である. そこで,琵琶湖を中心として木崎湖,池田湖等を含めた日本の貧栄養湖,中栄養湖の既採取のコアサンプルにつき上記目的に適したものを選んで分析した. また比較のために,南半球において日本と気候,地貭条件が類似しているニュージーランドの代表的な湖であるタウポ湖とワイカレモアナ湖の既採取のコアについても分析した. 無機イオンについては,湖底表面の酸化還元電位の急激な変化とともに濃度の大きな変化が生じるものはMnとAsである. Fe,C_0,Zn,Sb等についてもこの傾向が見られる. 生体由来のステロール類も堆積後の比較的初期の段階で分解,特異吸着が起こる. 堆積後脱水過程が進行するコア深部では,Asは特異的な凝集は起らないため偏析しないが,Mnは偏析する傾向があり堆積初期の忠実度と分解能を低下させる. しかし琵琶湖では千年程度の時間スケール内での平均値をとれば,Mn濃度は堆積環境の指標として用いられる. この例でも明らかな様に,化学物貭の濃度組成等から古環境を復元する場合には,現代の堆積環境において生じた現生の堆積物の研究がきわめて要重であることがあらためて確認された. 同位体の研究等は残されたが,63年度以後もこの種の研究は可能なかぎり継続して行くつもりである.
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