Research Abstract |
本研究は, 時間順序誤差(TOE)の実験, 確率的判断モデルの構築, モデルのパラメータ推定法の開発, モデルに基くTOEの計量的測定からなる. 研究目的上, モデルの妥当性を検証しやすい現象として, 幾何学的図形の大小判断に関するTOEをとりあげた. 予備実験によって検討した結果, 心理的に一次元の刺激として, 円を採用した. パーソナル, コンピュータを利用して, 半径が異なる5つの円刺激を用いて, 心理実験を行った. 各刺激対に関して, 刺激の提示順序効果を考慮し, 一回の実験につき, 全部で25の刺激対を提示した. これらをCRTディスプレイ上に, 提示位置と提示順序の両方に関して, 無作為に提示した. 実験条件は, 対刺激間の時間間隔について, 1秒, 1.5秒, 2秒の3条件を設けた. 被験者には, 各刺激対に関して, 第一刺激に対する第二刺激の大きさを3件法によって答えさせた. 一実験条件につき, 4回の実験を繰り返した. 従って各被験者は, 全部で12回の実験に参加した. 被験者群は2群あり, 第一群は106名, 第二群は128名であった. 上記の実験データを統計的に検定し, TOE現象の存在を認めた. その結果に基いて, 確率的判断モデルを構築した. 反応関数として, 正規関数, ロジスチック関数, 正弦関数の3種類の組み込み, データを解析する方法を開発した. この方法により, 各反応関数の下で, 各刺激の第一刺激あるいは, 第二刺激としての尺度値が推定される. また同時にDK判断の基準量と, モデルの統計的適合度及び尤度も計算される. 上記のデータに対して新方法を適用した. その結果, 開発した3種の確率的モデルによって, TOEを計量的に測定できることを確認し, 研究目的を達成した. この成果により, TOEのさらに精緻な心理モデルを構築する可能性を導いた.
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