Research Abstract |
通常の学級で教育を受けている精神遅滞児を小学校5校, 中学校5校より選んだ. それぞれの精神遅滞児に, WISC-R, 社会生活能力検査等を施した. 精神遅滞児が所属する通常の学級での普段の授業を記録し, 授業後, 授業者と研究者の話しあいを行った. 約1か月後, 授業者が工夫した授業がなされ, 記録した. 授業記録は, 教師の行動, 精神遅滞児の行動, 一般児の行動毎に分析した. 精神遅滞児が所属する通常の学級の精神遅滞児と級友たちの交流や対人関係を, 観察, 教師との話しあい, ソシオメトリック検査等によって把握した. 本研究の成果の一部を報告する. (1)同一教材の中で, 精神遅滞児に対して特に易しい課題を与えた授業は, 小学校では約4割あるが, 中学校は皆無であった. (2)1時間の授業の中で, 教師が精神遅滞児に対して指名, 発問等行った回数は, 小学校で平均2.1回, 中学校で平均1.2回であり, 肯定的に評価した回数は, 小学校で平均0.9回, 中学校で平均0.5回であった. (3)精神遅滞児の学習動作が学習以外の動作と比べて多い教科は, 小学校では体育, 音楽, 中学校では音楽, 美術, 体育であり, 後者が多い教科は, 小学校では算数, 国語, 中学校では数学, 社会であった. (4)級友が精神遅滞児に教示した回数は, 小学校では2.5回, 中学校では0.6回であった. 精神遅滞児の行動を級友全体で肯定評価する回数は, 小学校1.3回, 中学校0.15回であった(いずれも1時間当たりの平均値). (5)ソシオメトリック検査における社会測定地位指数の平均は, 小学校では0.004, 中学校では-0.192であった. (6)同一の精神遅滞児であっても, 教科や指導内容, 教師の対応により, 学習参加に大きな差があった.
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